金属行人(5月11日付)

 高炉大手が国内設備投資を拡大している。新日鉄住金が今年度から3カ年の中期経営計画で示した計1兆7千億円という数字は象徴的だろう。JFEスチールも同様に今後3年で計8500億円を投じるという。いずれも高水準だった前の3カ年よりさらに積み増す意欲的な計画だ▼両社とも設備投資の大きなテーマに据えるのが製鉄所の製造基盤整備。コークス炉や焼結機といった上工程設備の刷新は代表例だ。日本の製鉄所の多くは1950年代に建設された。半世紀余りを経て長寿命の設備は増えており、製造基盤をもう一度固め直す時期に来ている▼市場からは短期の数字が求められる今の時代。設備投資の在り方を考える上で、当面必要のない投資を先送りするという意見もあるだろう。ただ、設備投資を絞り過ぎたために、結果としてコストが高くついたという苦い経験談は少なくない。基盤を固め直すには次の50年を見据えるような長期の視点が欠かせない▼手元の辞書で「基盤」を引く。それが安定していることによって、そのものの進歩・発展が可能となる何物か―(『新明解国語辞典』)。基盤を整えることは成長の大前提。これからは着実に計画をやり遂げる実行力も試される。

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