【MLB】大谷の高い志をエ軍OBが改めて絶賛 「どの選手からも聞きたい言葉」とは…

マルチ安打を放ち勝利に貢献したエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

センター左に突き刺す豪快5号ソロ「オオタニはホームランだと分かっていました」

 二刀流の活躍で全米でセンセーションを巻き起こしているエンゼルスの大谷翔平投手。メジャー通算132勝のエンゼルスOBは「球界最高を目指す」と崇高な目標を掲げているスーパースターの“流儀”を「アメージング」と称賛している。

 天才のバットが再び爆発した。10日(日本時間11日)の本拠地ツインズ戦。大谷は4打数2安打2打点と活躍した。3回にスピードを生かした適時二塁打を放つと、7回には7試合ぶりの一発となる豪快な5号ソロ。長打2本で今季7度目のマルチ安打を記録した。

 この試合を全米で中継していたテレビ局「FOXスポーツ」でも、話題の中心は「Shohei Ohtani」だった。

 まずは3回2死二塁のチャンスで迎えた第2打席で適時二塁打。さらに、2点リードで迎えた7回の第4打席では、2死走者なしの場面でサイド右腕ヒルデンバーガーの速球を完璧に捉えた。センター左に突き刺すソロ弾。飛距離414フィート(約126.2メートル)の圧巻の5号ソロとなった。

「ストライクゾーン高めの逃げていくツーシーマーでした。ショウヘイ・オオタニは分かっていました。疑いの余地のないホームランだと。ロックパイルにほとんど届いていましたね」

 解説を務めていたのは、現役時代にメジャー通算132勝を挙げたマーク・グビザ氏。悠然と打球の行方を見届けながら、ゆっくりと走り出した大谷が、打った瞬間にホームランを確信していたと唸るように語った。

 打者として19試合に出場し、打率.354、5本塁打、16打点と圧巻の成績を残す大谷。OPS(出塁率+長打率)はさらに上がり、1.077となった。地元テレビ局「FOXスポーツ・ウェスト」の解説者として活躍するグビザ氏は、エンゼルスの試合をほとんど全て見守っているが、何よりも感銘を受けたのは23歳の若武者の崇高な“流儀”だったという。

「彼のスタンスがアメージング。考え方が素晴らしい」

「スプリングトレーニング中に通訳のイッペイ(水原一平氏)を通じて、ショウヘイ・オオタニにインタビューするという非常な幸運に恵まれました。そこではシーズンの抱負を聞きました。『今は自分のできることをすること。球界で最高の選手になりたい。自分の仕事、心配、すべてのプロセスはそのため』だと言っていました。どんな選手からもこの言葉が聞きたいものです。彼のスタンスがアメージングですよ。そのような考え方が素晴らしい」

 球界最高の名手になりたい――。大きな目標を実現するために、二刀流での独自のルーティーンを模索している大谷。打率.125、防御率27.00と試行錯誤に明け暮れたキャンプ中にも高い志を貫いた姿にグビザ氏は改めて感動していた。

 一方、現役時代にMLBとソフトバンクでプレーし、この試合で実況を務めた元投手のC・J・ニコウスキー氏も「まだ時期尚早ですが、素晴らしいシーズンです。投打両方で見ていて信じられないような活躍をしています。様々な物語がありますが、実際のところ、彼はあと2年待てば9桁のディールを手にすることができたのです」と力説した。

 MLBでは2年前に締結された新労使協定によって規定が2歳引き下げられ、米国外の25歳未満の選手はマイナー契約からスタートすることしかできなくなった。メジャー昇格してからも3年後までは年俸調停の権利を得られず、6年後まではフリーエージェント(FA)にもなれない。ドラフトで入団する新人と同様、自ずと最低年俸からスタートするシステムとなっている。大谷は、25歳まで待てば年俸総額2億ドル(約218億5000万円)以上のメガオファーを手にできるとも言われていたが、世界最高の選手を目指してこのタイミングを選んで渡米した。

 大金よりも夢を選んだ大谷の流儀――。二刀流のスーパースターの人間としてのスケールの大きさもアメリカで絶大な人気を博す大きな理由のようだ。

(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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