清武弘嗣に独占インタビュー!W杯への思い…話題の“スペイン代表選手”についても語る

FIFAワールドカップ・ロシア大会が、ひたひたと足音を立てて近づいてきた。

6月14日に開幕する、4年に一度の祭典。そこに大会に向け、多くの人が様々な思いを抱きながら日々を過ごしているに違いない。

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もちろん、この選手も―。

清武弘嗣。

4年前のブラジル大会に出場した28歳のMFは今、セレッソ大阪の一員として、2大会連続のワールドカップ出場を目指している。

そこで今回、Qolyは先日の試合で負傷してしまいその状態も気になる彼へのインタビューを敢行。

また、清武が契約しているadidasにおいて、日本代表のユニフォームやフットボールスパイクの開発などに携わっている山口智久氏に同席を依頼。特に後半、サッカー選手の多くがこだわりを持つスパイクの話などを二人にたっぷり聞いている。ひと味違うインタビューとして楽しんでいただければ幸いだ。

なお、Jリーグ入りかと話題の“あのスペイン代表選手”についても聞いたぞ。

以前とは違うセレッソでの役割

――まずは今シーズンここまでの自身のプレーを振り返っていかがでしょうか?

なかなか良い入りができた分、怪我は痛かったですが、ここに来てずっと試合に出続けているのでチームとしても状態は良いんじゃないかと思います。

――大阪に戻ってきて一年ほどになりますが、昔と今でどのような点が違いますか?

年齢ですね(笑)。それは冗談ですが、あの頃(※海外移籍前にセレッソに在籍していた2010~2012年)は何も考えないと言うか、サッカーにすごく没頭していたかなと思います。もちろん今も没頭していますけど、やはりチームを引っ張らないといけない年齢なのでそこは以前セレッソにいたときとはまったく違います。

――今のユン・ジョンファン監督のチームで自身がどのような役割を担っていると感じますか?

キャプテンの蛍(山口)は無口な分プレーで引っ張るタイプなので、口で言うのは僕とか宏太(水沼)ぐらいしかいないしそこは「言ってよ」とは言われます。プレー面でも自由を与えてもらっていますし、ユンさんが言っていることを守りながらチームの円滑油になれればと思っています。

――以前の清武選手はパスの出し手のイメージが強かったんですが、最近は受け手というかスペースへ入っていくプレーが多いと感じます。

パスを出せる選手が曜一朗(柿谷)や健勇(杉本)、蛍に宏太といるので、走ったら出てくるなという感じはあります。今のセレッソは純粋なトップ下を置いておらず(※清武は主に左サイドで出場)、僕はどちらかというとサイドプレーヤーのタイプではないのですが、味方に使ってもらってもらうための“上下動”が重要なのでスプリント回数は自然と増えています。

走らないと怒られるので(笑)。トップ下でも中央に入ったり外に張ってプレーしたりというのはずっとやってきましたが、スプリント回数は10回程度でした。サイドではその数が確実に増えているので、けっこう疲れますね。基本的に自由はすごく与えられているんですが、トップ下より守備をしなければいけないですし、最終ラインに入らないといけないことも少なくないです。

――ボールコントロールや時間の作り方、判断力、キックの精度に守備への貢献と、清武選手のプレーには様々な点で魅力を感じます。自身の強みを一つ挙げるとすれば何でしょうか?

強みというのはそんなになくて、「一定のプレーをある程度のレベルでできる」ぐらいにしか思っていないですね。どれが一番良いとかはあまり考えたことがないです。

――プレーしていて調子が良くない日もあると思いますが、そういったときはどんなことを考えてプレーするんですか?

調子が悪いときはとりあえず単純にはたいて、自分がボールを持つ時間を少なくします。2タッチとかで返して、徐々に慣れてきたらボールを持つようにします。それをやっていたら自然と調子も上がってきますね。引きずることはあまりもうなくなりました。

ドイツ、スペインと日本の違い

――クラブではドイツやスペインでもプレーし世界を間近に見てきましたが、世界のトップレベルと日本のサッカーを比べたとき、自身がもっとも強く感じた差はどこにありますか?

純粋にドイツと日本で比べたら、日本のほうが技術的にはレベルが高いと思います。ただ、球際や激しさはまったく違いますし、一試合一試合にかける思いは向こうのほうが全然強いです。「一対一で技術勝負をしてみろ」といわれたら日本人のほうがしなやかで柔らかさもあると思いますが、それよりも戦う気持ちだったりとか一つのバトルにかける思いだったりとか。そこがやっぱり一番重要なところで、そこで負けたら意味がないです。いくらテクニックがあって上手くても、体ごと来られたらかわせない選手もいますし。とはいえ、ドイツのブンデスリーガにももちろんたくさん上手い選手はいますが、単純に一対一で見たときには日本人選手のほうが技術はあると思いました。

スペインに関しては確実に日本よりも上だと思います。全然違いました。そこにプラスして激しかったですね。そんなに激しくないのかなと思って行きましたけど、ガツガツしていました。

――ドイツやスペインだと戦術的な部分もかなり要求されるんですか?

僕がプレーしたのは中位から下位に位置するニュルンベルクとハノーファーだったので、とりあえず「戦え」としか言われてなかったですね。上位のチームはもっとしっかりとした戦術があって自分たちがしたいサッカーを表現できますが、やはり下のほうのチームは生き残るために必死です。自分たちが描いている理想のサッカーはありますけどなかなか試合ではできないので、後ろに引いて強いチームにはカウンターを仕掛けるというのを4年間やりました。

ハノーファーのときに一時期タイフン・コルクトという監督がいて、この監督がポゼッション志向ですごく良いサッカーができていたんです。でもなかなか結果が出なくて途中解任されてしまいました。その後はやっぱりがっつり引くというか、守備的なサッカーになりましたね。

――ドイツ代表とスペイン代表についてはそれぞれどういったイメージを持っていますか?

代表クラスになるとそんなに変わらないです。スペインのほうが技術はあるしポゼッション率とかは高いと思いますけど、ドイツ代表のメンバーを見てもみんな上手い選手なのでそこまで差はないと思います。

――山口さんはドイツ代表とスペインについてどんなイメージを持っていますか?adidasとしても代表ではトップクラスのチームですが。

山口 アルゼンチンなども含めてですが、選手だけでなく国としてサッカー文化が染み付いているなと。そこは違うと感じますね。

――Jリーグには現在、元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキや、今もちょうどスペイン代表で噂になっている選手がいます。彼らのような選手が日本に来ることについてどう思いますか?

ポドルスキ選手が来ると聞いたときは「おっ」と思いましたけど、今回イニエスタ選手の名前を聞いたときは正直、「マジか!」と(笑)。今バルセロナで普通に試合に出ていて、ついこの間も活躍していましたし、あれを見たら…山口蛍とも「もし日本に来たらどんなことを思うんだろうな」と話していました。セビージャ時代にスーペルコパで対戦して、そのときはコンディションが良くなかった感じであまり目立っていなかったんですけど、ひとつひとつのプレーはやっぱり上手かったです。自分と同じぐらいの身長で、あの上手さは何なのだろうと…。

――仮にドイツやスペインと日本代表が対戦する場合、注意することはどのあたりになるでしょうか?

日本は監督が代わったばかりなので何とも想像しづらいですね。戦術、フォーメーション、選手、すべてが未知数なので…とりあえず引いてという感じになるんじゃないでしょうか。

※ワールドカップでも注目の両国。そして、この選手は果たして日本に来るのか…。

日本代表とワールドカップ

――ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督のとき、清武選手がトップ下に入ってチームが機能していた2016年秋ごろのチームがとても印象に残っています。ハリルホジッチ監督とのやり取りで印象的な出来事があったら教えてください。

僕は最初にサイドで使われて、「この選手はサイドで使えないな」というところからスタートしたと思っています。そのときはここからどうなるんだろうと思いましたが、その後自分の好きなポジションでもあるトップ下で使われるようになって、苦戦した試合もありましたけどアジアだと相手のボランチがトップ下にあまり付かないこともあり、けっこう自由にやらせてもらいましたね。もちろん大迫選手や岡崎選手らFWと協力しながら守備もしっかりやっていました。今はFWも含め守備でのハードワークがすごく重要ですし、日本も当然そこはやっていかないといけません。

――5月2日の名古屋戦で負傷交代しましたが、怪我は重くない感じですか?

全然大丈夫です。5月11日の練習からスプリントとかもしていますし、チームの練習にもすぐ合流して、20日の試合は問題なくいけると思います。

――もうすぐワールドカップです。4年前のブラジル大会は最後のコロンビア戦での途中出場、1試合のみでした。

鹿島アントラーズがACLの試合に臨んだため今節はセレッソの試合がなかったので、この前の長崎戦と名古屋戦が僕らにとって最後のアピールの場でした(※ワールドカップ本大会に向けた予備登録の期限は5月14日)。僕は名古屋戦の前半で代わってしまったのでそこは仕方ないとして、今まで積み上げてきたものがあります。今はプレーできる状態なので後は発表を待つだけですし、どうなっても後悔がないようにはしたいなと思っています。

中断前最後の試合である20日のサンフレッチェ広島戦。相手は首位なのでそこで勝って、代表メンバーに選ばれたら全力で行きますし、選ばれなくてもチームにとって大事な試合なので、とにかく今は広島戦で勝つということを考えています。

――ありがとうございます。

ではadidasの山口さんもいらっしゃいますし、ぜひスパイクの話をしたいと思います。Qoly的にはここからがある意味本番です(笑)。

なぜ「HG」のスパイクを愛用?

清武選手はこれまで「アディゼロ F50」、「ナイトロチャージ」、「エース」、そして「プレデター」とadidasの様々なモデルを履いてきました。“思い出のスパイク”はありますか?

個人的に「ナイトロチャージ」は足にフィットしていたので印象に残っていますね。今の「プレデター」も気に入っています。それまではずっと緑の「エース」を、履きつぶすまで使っていました。というのも、僕は練習から試合まで基本的に一足のスパイクを使うんです。やっぱり足に一番馴染んでいるので。試合用と練習用で分けている選手も多いですが、逆に僕はすごいなと感じます。まあ、サッカー選手はみんなスパイクにこだわりがありますね。

――間違いないです!「エース」や「プレデター」のようにミッドカット形状のスパイクはどうですか?

履き口の感触が「プレデター」は良いですね。素材的に伸びるのですんなり履けますし、フィット感も全然こちらのほうが好きです(※シームレスプライムニットソックス)。前のは履き口がちょっと固めだったので…ディスっているわけじゃないですよ(笑)。

山口 今のモデルが良ければ大丈夫です(笑)。

――山口さん、「プレデター」の一番の売りどこですか?

山口 清武選手が今おっしゃっていたソックス一体型の形状による足との一体感やホールド感は特徴の一つです。また、「プレデター」といえば元々アッパーに搭載されたフィンの凹凸によってボールに対して力を与えたり、コントロールしやすいというところが売りなので、柔らかいニット素材を使いながらもボール精度を高めるためのフィン機能が搭載されているところが一番のポイントですね。

――なるほど。そうしたなかで清武選手は、中高生なども普通に履いているHGソール(※ハードグラウンド向け)のスパイクを以前から愛用していますよね。どのような理由があるのでしょうか?

僕は足の甲を何度も怪我していて、プロ選手が一般的に履くFG(ファームグラウンド向け)はスタッドの数が少ないので僕にとっては足への負担が大きいんです。また僕の場合、HGでも芝のピッチで滑ることがそんなにないんですよね。ひどい雨のときならFG、あるいはSG(※ソフトグラウンド向けで取替式スタッドがあるモデル)を履いてみてもいいかなとは思うんですけど、この前の名古屋戦も土砂降りでしたがHGを履いて、一回も滑りませんでした。他の選手はツルツル滑っていたんですけど、僕は本当にまったく滑らなくて(笑)。

ドイツでも僕は冬場のぐちゃぐちゃのグランドでHGを履いていて、そのときも全然問題なかったです。だから僕は、足への負担とボールタッチの感覚を重視してHGのスパイクを使っています。

※上がFG、下がHGの『プレデター 18.1』。前足部のスタッドの数が違うことが分かる。ちなみに、パッと見で分かりやすい両モデルの違いはそのスタッドのカラーだ。

選手とメーカーでのコミュニケーション

――プレデターは今あるラインナップの中でも歴史のあるモデルの一つです。どんな選手に履いてほしいというイメージはありますか?

山口 清武選手もまさにそうですけど、ボールコントロールがこのシリーズのコンセプトになっています。なので、ボールを受けて出してといったボールを中心にテクニックを発揮することができる選手に履いてほしいですね。

――たとえば「エース」→「プレデター」といったモデルの切り替わりのタイミングでは、選手とメーカーでどういったコミュニケーションをとるのでしょうか?

発表前の段階から黒塗りのスパイクを履かせてもらったりします。ただ、僕の場合は先ほども言ったように、練習で長い時間履いて馴らしてから試合に使うので、発表された後いきなり切り替えるということは少ないかもしれないですね。あと僕は、色で「こちらのほうが大きい」とか「アッパーが伸びるとか伸びない」とか、けっこう個体差を感じちゃうんですよ。自分の感覚なんですけど。だから、しっくり来る色のスパイクをずっと履いちゃうこともある迷惑選手です(笑)。今の青の「プレデター」は結構慣れているので、次の色が合わないとまたもしかしたら…。緑の「エース」のときも本当に長く履いていました。

――そんなとき、メーカー側は「新しい色を履いてくれないかな」と思ったりは…。

山口 もちろん選手のパフォーマンスが最優先なので選手自身の感覚や意思を尊重しながら、極力最新のシューズを履いていただけるようコミュニケーションをとらせていただいてます。先ほどの滑る滑らないの話もそうなんですけど、理論上はポイントが長くて少ないほうが雨のピッチで滑りにくいとしても、清武選手のように毎日履いているスパイクのほうが慣れているから滑らないという選手は過去にもいました。逆に新しくてもSGやFGなどポイントが長くて少ないほうが安心できるという選手もいますし、やはり選手によって感じ方が様々なんだなと思います。

※ソーラーグリーンの『エース 17.1』はかなり長期間着用。以前にも同じ色のスパイクをこれまた長く履いていたことがあり、清武=緑のイメージがあるかもしれない。

――そういえば、ワールドカップに向けてadidasが『キャプテン翼』とのコラボを行っていますが、清武選手の好きなキャラクターは誰ですか?

僕は岬くんです。僕は翼くんタイプではないので、最終的に譲るよという(笑)。

――「キャプテン翼」といえば、翼くん×岬くんのようなコンビプレーも魅力の作品です。清武選手にも相性が良いと感じる選手はいますか?

セレッソは同じ感性を持っている選手が多いですね。蛍は確実にいつも自分のことを見てくれていますし、曜一朗もタイプは結構似ています。後は健勇も。昔は全然合わなかったんですけど(笑)、シンプルにやるところと持つところの判断が良くなって、代表に入ってから一気に合うようになりました。僕がボールを持ったときは常に裏を狙っていて、プレー中もよく言われます。

代表は本当にみんな上手いですし、個性がある選手がたくさんいますけど人に合わせられる選手もたくさんいますからね。生かし生かされるという感じです。だから僕の最初のときもすんなり入れました。代表に来る選手はみんな自分のプレーをしっかり持っていますから要求するところがそれぞれにあって、なおかつ人の意見もちゃんと聞いてくれる。だから僕もうまくできていると思っています。

――だからこそ、ワールドカップにもう一度ですね。

行きたいですね。選考もまだわからないですし、Jリーグの選手も海外の選手も誰が選ばれるかドキドキしていると思いますけど、とにかく選ばれた人はしっかりやらなければいけないと思います。

監督がこの時期に代わって「どうなんだ」って感じている人が今たくさんいると思うので、それを覆す活躍をしないと「監督解任がマイナスだったんじゃないか」と間違いなく言われます。なので、これからの日本のサッカーのためにも選ばれた人がしっかりやるしかないと僕は思います。やっぱり結果が一番なので。結果が出たら2020年や2022年という風にもつながりやすいと思いますし、今回のワールドカップというのはすごく大事ですね。

――山口さんからもワールドカップに向けて一言お願いします!

山口 勝ってほしいということに尽きますね。そのなかで、メンバーに選ばれたadidasの選手たちが活躍してくれれば言うことはないです。僕たちはとにかく一生懸命応援したいと思います。

――お二人とも、お忙しい中でありがとうございました。

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