金属行人(5月14日付)

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 「待てよ」と、鉄鋼業に携わるある経営者。言葉をためた後、「むしろ、鉄こそ将来性のある製品ではないか」と吐き出す▼この道半世紀の強者社長。だが、いよいよ経営のバトンを子息に手渡す段階になって「鉄鋼業の将来が不安だ」と漏らす。メーカーや商社の度重なる再編。「トップ交代後も、継続して取引が維持できるのか」と嘆息を交えて語っていた同氏だが、どうやら腹は決まったようだ。「鉄に夢を託す」ことに▼例えば、自動車。軽量化と電動化、自動運転などの技術革新が進み、鉄の使われ方が変わってくる。最近の日本のクルマをよく見ると、やはり樹脂などが増えている。ボディーに使う鉄も「ハイテン」「アルミ」が増えている。これに電動車普及が加われば、マフラーやエンジン、ガソリンタンク回りなどが大きく様変わりする。氏の心配に共感できる部分も多い▼しかし「待てよ」だ。「プラスチックのリサイクル性や環境への影響についての議論を、最近聞くようになった。考えてみれば、鉄は抜群のリサイクル性を持つ。人体に悪影響があるわけではなく、放置しても土と同化していく」▼一気に氏は持論を語り始めた。鉄の将来については悲観も楽観もあるが、ともあれ「鉄の可能性」に気付いた瞬間だった。