【MLB】大谷は偉大な先輩を超えるか 米誌選出、1年目に最も活躍した日本人は?

野茂英雄・大谷翔平・イチロー(左から)【写真:Getty Images】

米誌特集で1位はあのパイオニア、「プレッシャーの中で良いプレーをした」

 開幕から投打で圧巻の活躍を続けるエンゼルスの大谷翔平投手。チームも首位争いを演じており、大谷が出場した試合は勝率が上がるなど、すでにその影響力は大きなものとなっている。適応段階だったスプリングトレーニングでは結果が出ず、米国内では懐疑的な見方も広がっていたが、開幕後は圧倒的な能力の前に手のひらを返す地元メディアが続出。最高のスタートを切ったと言える。

 これまで多くの日本人選手が海を渡り、メジャーで活躍してきた。大谷はまだ1か月半を消化した段階で、この先、負傷や不振に苦しむこともありえる。ただ、1年目のシーズンを終えた時点で“先人“たちを上回るインパクトを残す可能性は高いとあって、米メディアは過去の日本人選手のデビューイヤーの活躍を振り返り、“格付け”している。

「日本人選手のメジャーリーグ1年目ランキング」と題して特集記事を掲載したのは、権威ある米スポーツ誌「スポーツ・イラストレイテッド」だ。日本人選手の1年目の活躍を9位までランク付けし、1位にはパイオニアの野茂英雄氏の名前を挙げている。

 1995年にドジャースでデビューした野茂氏は、トルネード投法でメジャーを席巻。日本人選手のメジャー移籍への道を切り拓き、ストライキ明けのメジャリーグの人気回復にも大きな役割を果たすなど、強烈なインパクトを残した。

 記事では寸評で「ノモが1位なのはイチローより良かったからではなく、メジャーリーグで外国人選手が直面してきた、厳しい精査を受けるというプレッシャーの中で良いプレーをしたからだ。日米のメディアから大きな期待を受ける中、ノモは26歳の時にアメリカに渡り、1995年にナショナル・リーグ新人王を受賞し、サイ・ヤング賞の投票では4位となり、オールスターにも選出された。リーグ最多の236奪三振、11試合でそれぞれ10以上の三振を奪い、6月には先発したすべての試合で8回以上投げた。日本のメディアからすべての動きを報じられながら、こうしたことを達成した」と評価。大きな注目の中で結果を残した野茂氏の大きな功績を称えている。

佐々木主浩・松井秀喜・大塚晶文(左から)【写真:Getty Images】

イチローは2位も「ここ20年間で最も記憶に残る1年の1つ」

 2位はイチロー外野手。ルーキーイヤーの圧巻の活躍については、もはや説明する必要もないだろう。パワー全盛だったメジャーにスピード溢れるプレースタイルで新たな風を吹き込ませ、メジャータイ記録の116勝を挙げたマリナーズを牽引した。新人王とMVPのダブル受賞はメジャー史上でも2人しか達成していない偉業だ。

「メジャーリーグ史上最高の1年目を迎えた選手の1人ではないし、日本人に限定してもそうではない。しかし、ここ20年間で最も記憶に残る1年の1つである。27歳で初めてメジャーリーグのピッチャーと対決し、242安打、打率.350、56盗塁の成績で、三振率はわずか7%であった。この年にチームは116勝し、スターとなったイチローはアメリカン・リーグのMVPと新人王を受賞し、オールスターにも選出され、シルバースラッガー賞とゴールドグラブ賞も受賞した。そして、イチローは最も美しい送球ができる選手の1人である」

 打撃、走塁に加え、デビュー直後の伝説の「レーザービーム」送球もメジャーファンの記憶には強烈に刻まれている。27歳でデビューしながら、通算3000安打も達成。6年ぶりにマリナーズに復帰したレジェンドは会長付特別補佐に就任し、今季はもう試合に出場しないが、来季以降に“復帰”する可能性も残されている。

 そして、3位は佐々木主浩氏(マリナーズ)、4位は大塚晶文氏(パドレス)と救援投手が続く。佐々木氏については「2000年に32歳でアメリカにやってきて、マリナーズで37セーブを記録(新人では最多)し、アメリカン・リーグ新人王を受賞した。ササキはメジャーリーグで4年しかプレーしなかったが、そのうちの3年間はメジャーリーグで最も恐れられた抑え投手の1人であった」と称賛。大塚氏についても「2年間、オオツカはナショナル・リーグの最も恐れられる中継ぎ投手の1人であった。パドレスの32歳の新人として、73回の登板で防御率1.76、奪三振率10.8を記録した。WAR指標で2.9というのは、投手の中でジェイク・ピービに次いで高い数値であった」と高く評価している。

 巨人で圧倒的な成績を残し、ヤンキースに移籍した松井秀喜氏は5位で選出された。ヤンキースタジアム初戦での満塁弾という華々しいデビューの後、地元メディアからは「ゴロキング」と揶揄された時期もあったが、名将ジョー・トーリ監督は松井氏に絶大な信頼を置き、主に中軸で起用し続けた。この年のヤンキースの地区制覇にも大きく貢献している。

 寸評では「ノモと同様に、マツイは2003年の渡米時に日本最大のスターの1人であった。29歳の新人はアメリカン・リーグ新人王の投票で、ロイヤルズの遊撃手アンヘル・ベロアに次いで惜しくも2位となった。もし、この2人が2018年に同じ成績を残したとしたら、マツイが受賞するであろうことはほぼ確かだ」と指摘。その後、メジャーで10年間活躍したことなども紹介している。

斎藤隆・田中将大・高津臣吾・井口資仁(左から)【写真:Getty Images】

「タナカは現在も最も打ちにくい投手の1人」、斎藤氏は7年間で好成績マーク

 6位はヤクルトからホワイトソックスに移籍した高津臣吾氏。寸評では「ほぼ無名の35歳のリリーフ投手として、新人王に手が届きそうであった」とデビューイヤーを振り返っている。そして、「最初の1年には、出塁を許さない圧倒的な1か月があった。5月28日~6月19日は7回1/3で完璧な投球をした。5月21日~8月6日に行われた25試合で、高津は2点しか与えなかった」と前半戦での快投を振り返っている。

 前年の楽天での24勝0敗という衝撃的な成績を引っさげ、2014年にヤンキースでデビューした田中将大投手は7位。前半戦は圧倒的な投球を見せたが、7月に右肘の靭帯部分断裂と診断され、約2か月半の長期離脱を余儀なくされた。寸評では「ほとんどの先輩たちと異なり、タナカはメジャーリーグでデビューする前にもかかわらず年俸2200万ドル(約24億円)で契約した。期待されていたほど圧倒的な成績は残せなかったが、1年目を20登板の防御率2.77で終えた。タナカは現在もメジャーリーグで最も打ちにくい投手の1人であるが、最初の年が一番安定していた」としている。

 8位には、佐々木氏、大塚氏、高津氏に続いて救援投手がランクイン。ドジャースでデビューした斎藤隆氏だ。「サイトウは36歳でロサンゼルスにやってきて、エリック・ガニエから抑え投手の役割を引き継いだ。2006年に防御率2.07、奪三振率12.3という成績を残し、ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞の投票で8位、新人王の投票で7位となり、過去10年間で最も人気のあったドジャースの選手の代わりを務めた。36歳でメジャーリーグに挑戦したにもかかわらず、7年間プレーし、防御率2.34、奪三振率10.7という成績でリタイアした」。斎藤氏はその後、地元・仙台の楽天でキャリアを終えたが、メジャーでの好成績を記事では特筆している。

 そして、9位は1年目でホワイトソックスのワールドシリーズ制覇に貢献した現ロッテ監督の井口資仁氏。「イグチはホワイトソックスの選手として、メジャー1年目でワールドシリーズ制覇を経験するという幸運に恵まれた。15本塁打、15盗塁、チーム3位のOPS(出塁率+長打率).746の成績を残し、2005年のアメリカン・リーグ新人王の投票で4位となった」。世界一のチームで、二塁のレギュラーとして攻守両面で貴重な役割を果たした。

 大谷はこのまま活躍を続け、イチロー、そして野茂氏と比較される成績を残せるのか。それとも、偉大な先輩を上回る評価を手にするのか。まずは健康に1年間を過ごせるかがポイントになる。

(Full-Count編集部)

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