長崎友愛病院 24時間救急を中止 長崎市の医療格差 拡大 南部 医師、看護師の確保難しく

 長崎市蚊焼町の長崎友愛病院(茅野丈二理事長)は4月から、24時間態勢の救急病院であることを示す「救急告示」を取り下げ、夜間・休日の救急外来患者の受け入れを中止した。市内で最も南に位置する救急病院だったが、看護師不足などでこれまでの態勢を保てなくなった。市南部は中心部などに比べ人材確保が難しいとされ、大病院が集中する中心部との医療格差は拡大傾向。地元の医療関係者は危機感を強めている。
 救急告示は、態勢が整っている医療機関が自ら申し出て、県の認定を受ける。長崎友愛病院は1991年の開業以来、救急病院として運営。茅野理事長によると、救急告示を続けるには夜間・休日に病棟勤務の看護師とは別に救急専従の看護師を常時1人置く必要があるが、夜間・休日に勤務可能な看護師を必要な人数確保することは困難だという。
 3月までの夜間・休日の救急対応は月数件程度だった。現在は病院玄関などに「救急医療体制の継続が困難となったため、診療時間内で受診されるようご協力をよろしくお願いいたします」と張り紙をするなどして、患者に理解を求めている。茅野理事長は「本来は24時間365日対応すべきであり、残念だ」と肩を落とす。
 県医療人材対策室によると、国の直近の調査で県内の看護職員は2016年末に2万5774人で、2年前に比べ563人増加。一方、県看護協会運営の「県ナースセンター」が昨年4月、県内の医療機関や施設、保健所などを対象に実施した看護職員の需要調査で、病院では「大いに不足」「不足」「やや不足」が合わせて65・4%に上った。
 同協会の副島都志子会長は「県内の看護師の就業者数は増えているが、訪問看護や高齢者施設など働く場も増えており、中小の病院や離島などで足りない傾向がある。看護師は女性が多く、働き方の変化もあって夜間や休日の勤務を敬遠する人も増えた」と分析する。
 長崎市では人口が多い中心部などに大病院が集中し、南部など周辺部に医療機関が少ない偏りが指摘される。現在、医療需要や人口動向を基にした「県地域医療構想」に沿い、長崎医療圏(長崎、西海両市と西彼杵郡)など県内8区域ごとに地域医療体制を再編する動きが進んでいる。市市民健康部は「医療の地域間格差は解決すべき課題と認識している。構想実現を目指す中でしっかり取り組みたい」とする。
 市南部で唯一の救急病院となった長崎記念病院(深堀町1丁目)の福井洋会長は「中心部や北部に比べ、南部は常勤の医師、看護師の確保が難しく、人材の高齢化も進んでいる。このままでは将来、十分な医療の提供が難しくなりかねない」と懸念を強めている。

◎ズーム/救急告示医療機関

 厚生労働省令に基づき、自ら申し出て公的な救急業務に協力している都道府県認定の病院や診療所。知識、経験のある医師が常時診療に従事しており、レントゲンや輸血設備があるなど人員、施設に関する認定要件がある。県によると4月現在、県内の認定機関は62カ所。県内の救急医療は県医療計画などに基づき、認定機関などが連携して受け入れ態勢をつくり対応している。

長崎友愛病院の玄関に掲示された、診療時間内での受診を呼び掛ける張り紙=長崎市蚊焼町

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