白内障 原爆症認めず 長崎地裁 経過観察の女性 「医療を要する」否定

 長崎原爆で被爆し、白内障を発症した佐賀県の女性(80)が国に原爆症認定申請の却下処分取り消しを求めた訴訟の判決で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は15日、「要医療性を認めることは困難」と請求を棄却した。原告側は控訴を検討する。
 訴状によると、女性は8歳の時に爆心地から約0・7キロの長崎市城山町で被爆。1994年ごろに白内障を患い、点眼液の処方を受け経過観察を続けた。国の審査方針では、加齢に起因しない白内障を患った場合、爆心地から約1・5キロ以内で被爆し医療を必要とする状態(要医療性)と確認されれば、原爆症と積極認定している。裁判は経過観察が医療を必要とする状態に該当するかが争点だった。
 判決では、原告が手術を希望せず白内障で日常生活に支障を来していないと指摘。点眼液での経過観察について「積極的な治療」を行っていないとして「現に医療を要する状態にあるとはいえない」と判断した。
 要医療性に関して最高裁の判例はないが、今年2月の広島高裁の判決では白内障を患い経過観察中だった被爆者の原告が原爆症と認められた。3月の名古屋高裁でも、長崎で被爆した女性2人の経過観察を医療と認める判決が出ていた。
 女性の弁護団は長崎市役所で会見。原章夫弁護士は「判決を到底、承服できない。高裁では経過観察で十分との立場を取っており、その流れにも反する」と話した。

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