出産育児 知的障害あっても 周囲がサポート「産んで良かった」

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「子どもを産んで良かった」と話す木村一博さん、美香さん夫婦と長女の乙女ちゃん=熊本市中央区

 「この子を産んで良かった」。軽度の知的障害がある熊本市東区の木村一博さん(47)、美香さん(34)夫婦は長女の乙女ちゃん(6)の子育てに奮闘中だ。旧優生保護法の下では、知的障害などを理由に強制不妊手術が認められた。2人は「障害があっても無くても同じ人間。周囲に助けてもらい、子育てができる」と話している。

 木村さん家族は、美香さんの父親と一家4人で暮らしている。夫婦とも療育手帳を持っており、一博さんは市内の事業所でクリーニングの仕事に携わる。障害年金なども含め、経済的に自立した生活だという。

 夫婦は友人の紹介で出会った。お互いの優しさに引かれ、2010年10月に結婚。11年7月には乙女ちゃんが生まれた。予定より約1カ月早い出産で、「無事に生まれた時はほっとした」と一博さん。

 乙女ちゃんが4歳のとき、知的障害があると分かった。美香さんは、知的障害のある人や家族でつくる「熊本市手をつなぐ育成会」や行政などに相談を重ね、乙女ちゃんの療育を始めた。5歳からは幼稚園に入り、楽しく通ったという。今春、小学校に入学した。

 親として小学校生活に期待と不安が入り交じるが、美香さんは「分からないことは周りに聞く」と前向きだ。「赤ちゃんのころは、どうしたらいいか分からないことだらけだったけれど、周りにアドバイスされてどうにかやってきた。同じ障害のある子を持つママ友もたくさんできた。産んで良かった」

 夫婦と10年以上親交のある“お母さん代わり”もいる。育成会の長野京子さん(62)。幼稚園の説明会に同行したり、提出書類を一緒に書いたりして美香さんをサポート。住まいも近く、何でも相談できる間柄だ。

 長野さんの知る当事者カップルの中には、子どもができたが、育てられずに施設に預けたケースがあった。「きれいごとだけで結婚、出産はできないと思う。ただ、最も大切なのは本人たちの希望。周囲がどれだけ助け、理解するかが鍵だ」と長野さん。

 木村さん家族の幸せな雰囲気は、周りにも良い影響を与えている。育成会の当事者部会では、みんなが乙女ちゃんをかわいがり、会員同士のトラブルも減ったという。

 長野さんは「旧優生保護法は、当事者の選択を奪っていたのが大きな問題だ」と指摘する。県内では1951~76年の間に246人が本人の同意なく不妊手術を受けた。美香さんは「体を傷つけて産めなくするなんて、人間のやることじゃない」と憤る。「この子は優しい子に育てたい。人の嫌がることをしない子に」と、膝の上の乙女ちゃんを抱き締めた。(文化生活部・清島理紗)

(2018年5月17日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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