【きょう「全国建築板金業者宮城大会」】〈第70回の節目、東日本大震災から7年〉復興から再生へ建築板金の総合力結集 近代化と経営基盤強化へ一丸

 全日本板金工業組合連合会(全板連)と日本建築板金協会(日板協)はきょう17日、仙台市宮城野区の複合施設「みやぎ産業交流センター」(通称・夢メッセみやぎ)で「全国建築板金業者宮城大会」を開催する。宮城県が会場となるのは1976年(昭51)以来42年ぶり。同様の全国大会は49年(昭24)の岩手大会(盛岡市)を起点に毎年各地で企画しており、今年で第70回の節目を迎える。(中野 裕介)

 会場には、全国の7ブロック(北海道・東北・関東甲信越・中部・西部・四国・九州)から総勢3500人を超える建築板金業の関係者が参集し、建築板金の加工・工事業における近代化と経営基盤の強化などに向けて思いを一つにする。来賓には国や県をはじめ行政のトップが顔をそろえ、鋼板メーカーや商社といった板金の素材を取り扱う鉄鋼業界各社も来賓に名を連ねる。

 いずれの大会もご当地ならではの独自性豊かな「おもてなし」で来場者を迎える。会場の一角では農産物や工芸品が彩り豊かにずらりと並ぶ。一昨年の京都大会では京都府板金工組と青年会が1年半かけて制作した銅製の京板鉾がお目見えし、大会に先立っての前夜祭では、来賓に精巧な造りのツルとカメを一対贈るという粋な計らいがあった。今回は東北板金工業組合協議会が運営し、宮城県板金工業組合と全板興業が実行する。

 各大会ではこれまでも「総合テーマ」を掲げており、宮城大会では「復興から再生へ いま一度建築板金の力で!」を標榜(ひょうぼう)する。その背景には東日本大震災が起きた2カ月後の2011年5月に同じ東北の地で開催した、青森大会で表明した「災害復興のため業界組織を挙げて支援しよう」とのスローガンが横たわる。この年は全国の組合から被災地の組合に義援金が贈られるなど名実ともに組織の結束力の強さを改めて実感した関係者は少なくない。

 当時の総合テーマは「希望と熱意、復興への活力!築いていこう業界の将来、日本の未来―がんばれ日本!負けるな東北!!」。7年前の決意を風化させないことを改めて誓う場として、業界の総意で宮城を開催地に選んだ。

 もっとも建築板金業が主戦場とする日本は人口減少や少子高齢化といった「静かなる有事」に直面する。業界では「登録基幹技能者制度」や経営の未来を探る「次世代研究会」、「匠の技を継承する競技大会」などの各種事業を推進し、一つ一つの活動を通じて青年部が強固な組織力を培っている。

 会場では、今年2月に静岡県富士宮市の富士教育訓練センターで実施した第40回全国建築板金競技大会において、技能競技と建築技術両部で上位の成績を収めた入賞者を称え、表彰式を挙行する。併せて両部門の1位から5位までの作品を場内に展示し、一人ひとりが磨き上げた屈指の腕前を来場者に見てもらう。各地の組合で理事長を退任した対象者や組合事務局に10年以上勤務した職員をねぎらう機会にも充て、建築板金業界の「これまで」と「いま」、そして「これから」に携わる関係者の晴れ舞台を整える。

 一連の経緯を踏まえ、宮城大会は被災地の復興とともに、子どもたちをはじめ将来の担い手に建築板金業の誇りを連綿かつ堂々と語り継いでいく上での「大きな区切り」に位置づけられる。次なる目標に対し、▽登録基幹技能者のさらなる地位向上と正当な評価の獲得▽次世代のさらなる飛躍のための後継者の育成強化▽非組合員の加入促進と組合員の社会保険加入の徹底▽業界の国保・年金基金での福利厚生の充実―を大会宣言に盛り込む。

 建築板金が果たす社会的な使命やそれに付随する役割は計り知れない。「今、行動するとき」―。11年の総合テーマで冒頭にうたった一節は、7年の時を経てなお色あせることなく全国の建築板金業者に息づいている。

全国建築板金業者宮城大会の意義/石本惣治大会会長に聞く/復興への思い新たに/業界挙げて「支援」決意

 第70回全国建築板金業者宮城大会に先立ち、主催する全日本板金工業組合連合会(全板連)と日本建築板金協会(日板協)の代表で、大会会長の石本惣治氏に開催の意義などを聞いた。

――1949年(昭24)に岩手県盛岡市で開催して以来積み重ねてきた大会も今年で70回目。人間で言えば古希に当たる大きな節目を迎える。

 「建築板金業界で毎年恒例のこの大会が今年、宮城の地で3500人を超える全国の仲間と開催でき、国会や中央省庁、宮城県、仙台市、メーカー、商社など各方面から臨席を賜れることは本当に喜ばしい限りだ。これまでそれぞれの開催地において、各地の板金工業組合がご当地ならではの趣向を凝らして多くの参加者を迎え入れ、いずれも大いに盛り上がりを見せてきた。今回の宮城、そして次回の高知でも創意工夫に満ちた空間づくりが期待される」

 「どの大会とも、全板連が掲げる『建築板金の加工や工事業を営む事業主や家族、関連する企業が一体となって、国民住生活の改善・向上を進めていく』取り組みを進める上で不可欠な原動力を醸成する貴重な場だ。建築板金業界に生きる者同士、相互の交流はもとより、企業や地域の垣根を越えて横たわる共通の課題やそれにかかわる取り組みを同じ空間で共有する重みは計り知れない」

――宮城大会に寄せる思いは。

 「復興への思いを新たに臨みたい。2011年に東日本大震災が起きてから7年余りが経過する中で開催する。私は7年前の第63回青森大会で全板連、日板協をはじめとする全板連グループの代表に就任し、復興への熱い思いは人一倍強いと自負している。3千人もの建築板金業者が『災害復興のため業界組織を挙げて支援しよう』との決意のもと、東北地方と思いを一つにした当時の光景は、どの参加者にとっても記憶に新しいところだろう」

 「先の平昌五輪・パラリンピックにおける日本人選手の活躍は記憶に新しいが、中でもフィギュアスケートで五輪史上66年ぶりに男子シングルで2大会連続金メダルの獲得という大快挙を遂げた羽生結弦選手の出身地は宮城県仙台市。今年4月には『2連覇おめでとう』パレードが開催され、地元のみなさんの喜びもひとしおだっただろう。2年後に控える五輪・パラリンピックの東京大会に向けて追い風となるに違いない」

――被災各県では再建に向けた整備工事が続いている。

 「未曾有の大災害ゆえ一朝一夕の復興が難しいことは十分理解している。全国の建築板金業者の心はいつも被災なさったみなさんとともにあり、再生を切に願っている。世の中の情勢は相変わらず混沌とする昨今だが、少し国内に目を向けると、各地で頻発するさまざまな規模の自然災害が我々に常に高い危機意識を持ち続ける重要性を投げかけているように映る」

――時代の流れとともに、建築板金、さらにはその背後にある建設の業界を取り巻く事業環境は厳しさを増している。

 「建設業界では若手技能労働者の不足が深刻化しており、当組合も例外ではない。将来を担う青年部は強固な組織力と充実した活動を続ける誇らしい存在だが、彼らが自分の子どもたちに建築板金業を堂々と語り継ぐための環境を整えることも私たちの使命だと考えている」

――大会の企画・運営に当たっては、青年部による部分が大きい。

 「早い時期から若年層の関係者に団体の事業活動へ参画してもらう観点では、横の人脈づくりにとても有効な機会だろう。建築板金業界随一の競技大会に位置づけられる『全国建築板金競技大会』の上位入賞者を表彰したり、功労章や感謝状を対象者に贈呈したりするなど、業界の『これまで』と『これから』の担い手をねぎらい、励ます場に我々の仲間たちが集う意味合いは大きい。今後も建築板金業者が一堂に会する場として大会を開催し続けていき、夢と希望、誇りをもてる業界づくりの礎となってほしい」

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