新エネルギー基本計画、経産省が素案公表

 経済産業省は16日、国のエネルギー政策の基本方針となる「エネルギー基本計画」の見直しに当たり、新計画の素案を公表した。現行計画で示した基本方針をおおむね踏襲する一方、地球温暖化対策を巡る新たな動きなど、ここ数年の情勢変化を踏まえた政策課題を示した。

 政府はエネルギー政策の基本的視点として「3E+S」(安定供給、経済効率性、環境適合、安全性)を前面に出し、その実現を目指している。素案はこの基本方針を踏襲するとともに、2030年時点のエネルギーミックス(電源構成)についても従来方針を維持した。

 新しい計画は意見公募などを経て今夏にも閣議決定される見通し。

エネ基本計画素案/電力料金の上昇などコスト問題への言及減少/鉄鋼業界に懸念の声

 新しいエネルギー基本計画の素案が16日示された。鉄鋼業界では、「3E+S」を柱とする基本方針や、30年時点のエネルギーミックスが踏襲されたことを評価する声が上がった。一方で、電力料金の高止まりなどエネルギーコスト問題への言及が現行計画に比べ減ったことを捉え、懸念を示す向きもあった。

 素案は、50年をターゲットとした地球温暖化対策の長期目標と、30年を視野に入れたエネルギー基本計画との関係性について多くのページを割いた。また「エネルギーをめぐる情勢変化」については、「脱炭素化に向けた技術間競争の始まり」「国家間・企業間の競争本格化」など地球温暖化対策に関連する変化を示した。鉄鋼業界の関係者はこの点について「3E+S」の中で「環境」の比重が高まった印象を受けた」と話す。

 現行計画は「情勢変化」の項目にエネルギーコストに関する変化を詳細に示し、家庭・企業の負担増の解消に向けた政策方針を示した。今回の素案でも、この問題には触れてはいるが、「環境」が前面に出たことで、鉄鋼業界をはじめとするものづくり産業が直面しているエネルギーコストの問題はやや周縁に押しやられた格好だ。鉄鋼業界では「電力コストは現行計画の策定時よりも深刻になっている。このままでは国際競争力が大きく毀損する」との声が出ている。

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