両親アシスト、厨房守る 元ロアッソ選手・森川さん

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再建した「焼肉もりかわ」の前に立つ森川泰臣さん(中央)と父の公高さん(右)、母の成子さん=14日、益城町

 益城町田原に建つ新築の店「焼肉もりかわ」。厨房[ちゅうぼう]と客席の間をフットワーク軽く駆け回るのは、サッカーJ2ロアッソ熊本のDFだった森川泰臣さん(23)。ことし1月に選手生活にピリオドを打ち、実家で再スタートを切った。「支えてくれた方々に恩返しをしたい」と決意を胸に刻む。

 創業約40年。2階建ての店は2016年4月16日の熊本地震の本震で全壊した。当時はロアッソのユースからトップチーム入りして4年目。「廃虚を目の前にしても現実のものとは思えなかった」

 公高さん(51)、成子さん(51)の両親と姉、弟2人の家族6人で再建に向けて話し合いを続けた。近くの空き店舗に移転する案もあったが、みんなの願いは「思い出のある、この場所で」だった。長男の森川さんは「再建資金づくりなど、大変になるだろう」と引っ掛かるものを心に抱きつつも、「サッカーでの可能性を諦めきれなかった」。

 だが、ロアッソが16年シーズンのリーグ戦に5月に復帰すると、厳しい現実が待っていた。出場機会はなく、7月にJ3藤枝(静岡)へ期限付きで移籍し、11月にロアッソを退団。それでもプレーの場を求めて、下部リーグのヴェルスパ大分、さらに神奈川県の企業チームへ移った。

 「自分の代わりはいくらでもいる。もっと必要とされる場所があるのではないか」。そう感じ始めている時、昨年11月の実家の営業再開以降、父親が働きづめだと耳にした。「これまで自由にやらせてくれた両親を助けたい」。古里への思いが、現役引退へと背中を押した。

 働き始めて3カ月。仕事の厳しさを痛感する毎日だ。昼前に仕込みを始め、仕事が終わるのは日付が変わる頃。「肉の切り方、野菜の盛り付け方…。覚えることは多く、苦労している」と明かす。

 でも5年間のプロ生活の経験が支えてくれる。元日本代表の巻誠一郎選手らを挙げ、「ロアッソの仲間から高い意識を学べた。どの世界も一緒。努力した分だけ自分に返ってくる」。いまもチームとの絆は深く、主将でGKの佐藤昭大選手や多くのスタッフが来店し、「温かく応援してくれる」と感謝する。

 ロアッソの公式戦に出場できず、「サポーターに元気を届けることはできなかった。その分、この店で一から頑張る。一人でも多くのお客さんを喜ばせたい」。再起へのキックオフ。かつての赤馬戦士は新たな“ピッチ”での躍動を誓う。(樋口琢郎)

(2018年5月17日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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