女優・北原里英に期待! NGTから演技の世界へ

北原里英さん

 NGT48の初代キャプテンを務めた北原里英さんがこの春、約10年間在籍したAKBグループを”卒業”し、女優への道を本格的に歩き始めた。

 2007年にAKB48のオーディションに合格し、翌年に劇場デビュー。その年の10月に発売されたシングル「大声ダイヤモンド」で初選抜メンバー入りを果たすなど、次期エース候補の1人として大きな注目を集めた。機転も利き、AKB関連のバラエティー番組でもおおいに活躍した。

 しかしその後、シングル選抜から漏れることが続き、同期の指原莉乃に大きなスポットライトが当たるようになったが、ステージではいつも笑顔を絶やさなかった。大きな転帰となったのが15年に設立されたNGTへの移籍だった。初代キャプテンに就任してメンバー選びから携わり、グループのかたちを作り上げた立役者となった。

 コンサート終了後の記者会見での受け答えは、そんな北原さんのアイドル人生を端的に表していた。本番中に発言した「新潟に救われました」の真意を記者に尋ねられると、「AKBで一時期は選抜にも入ることができず、総選挙でもあまり良い順位を取ることができなくて、このままひっそり卒業するしかないんだろうなって思っていました」と不遇の日々を振り返った。

 その上で「そんな中、NGT行きの打診をいただいて、結果としてファンの皆さんの応援が一層熱くなったり、新潟県で新しく応援してくださる方が増えたりして、こんな大きな会場で、卒業コンサートをやってもらえることに。抽象的な表現ではあるのですが、新潟に本当に救ってもらったなと思います」としみじみと語った。

 アイドル人生の最後は後輩メンバーやファンに惜しまれながら卒業した北原さんだったが、時を置かずに、「新・幕末純情伝」で主演を務めることも発表された。過去には主人公の沖田役を広末涼子、石原さとみ、鈴木杏、桐谷美玲、元SKE松井玲奈らが務めており、人気女優の登竜門とも呼ばれる舞台だ。

 同作品は過激なラブシーンが毎回話題となるが、彼女ならそれを果敢にこなしつつ、その先のことも見据えながら舞台に立つことだろう。そう思うのは卒業コンサート前に東京都内でインタビューした際に北原さんが答えてくれた演技論が非常に興味深いものだったからだ。

 今年2月公開の映画「サニー」で誘拐監禁された主人公の女性教師を演じた時のことを振り返りつつ、「私は同じ年代の女優さんに比べてお芝居の経験が浅いから、今までは体を張ることで『アイドルなのにすごい』と言われたいといきがっていた気がします。でも今後はAKBの看板もなくなり、体を張るのは当たり前。普通の演技がちゃんとできる女優になりたいんです」と決意を語っていた。

 その話を聞きながら、この人は本当に演技が好きなんだと実感するとともに、6年前に北原さんを取材した際、色紙に書いてもらった将来の夢のことを思い出した。そこには、いつか「月9」に出演したいと書かれていた。

 月9の”価値”は当時と比べて相対的に低くなっているかもしれないが、苦労人でありながら笑顔で頑張り続けた彼女なら、ドラマや映画、舞台など幅広い世界で活躍してくれるはず。それがまた、後に続くメンバーたちの糧になることだろう。(共同通信文化部・関口康雄)

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