「島々引っ張り 古里一つに」 一大イベントに成長「五島綱引」 立ち上げから尽力 冨田さん(元奈留支所長)

 五島列島の“真ん中”で綱を引く-。五島市の奈留島で開催される「五島綱引(つなひき)選手権」が20日、第30回大会の節目を迎える。昭和の終わりに住民が親睦のため始めた小さな大会は、県内外の強豪チームも出場する一大イベントに成長した。立ち上げや運営に長年携わった市元奈留支所長、冨田好文さん(64)に、これまでの歩みを聞いた。
 前身は1986、87年ごろ、島内の青年団や体育・文化サークル数十団体が、対抗戦を繰り広げた綱引き大会。当時、旧奈留町教委で社会体育担当の冨田さんは、地域おこしの起爆剤として生かそうと考えた。
 「島の主産業は漁業。綱引きは、巻き網船団が力を合わせて漁網を引く姿にも重なり、奈留の特色あるスポーツとしてぴったりだった」。五島綱引連盟の設立や審判養成に奔走し、88年に選手権の第1回大会開催にこぎ着けた。
 仲間たちと、よく語り合った話がある。「上五島と下五島の“真ん中”にあるのが奈留島。綱引きのように島々を引っ張り、古里を一つにしよう」
 各地の綱引き大会を視察し県外の競技団体と交流を深め、島に強豪を呼んだ。最大で55チームが参加するまでに規模が拡大。2001年には九州各県の代表が集まる「全九州綱引選手権」を開催した。綱引きの生む縁が、小さな島に多くの人々を引き寄せていた。
 最大の目的は奈留島の活性化。島のファンを増やそうと、おもてなしに力を入れた。毎年、大会前夜には歓迎会を開き、豪華な舟盛りや太鼓の演奏などで選手を激励。参加賞として島内で使える商品券を配った。試合後、選手たちは両手いっぱいに土産物を抱え、笑顔で帰りのフェリーに乗り込んでいったという。
 島の人口は年々減っている。冨田さんが指導する小学生の柔道チームも、選手権への出場は今年で最後になりそうだ。「綱引きは奈留の宝。これからも続けて、島の活性化につなげてほしい。継続は力です」。冨田さんはかみしめるように語った。
 第30回大会は20日午前10時から、五島市奈留町の市奈留総合体育館で開催。島内外から46チームが出場する。

2010年の大会で、最後尾で綱を引く冨田さん(冨田さん提供)
1997年大会。トップ選手だけではなく、子どもたちや地元の主婦たちも綱を引いた。左から2人目が冨田さん(奈留支所提供)

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