鹿児島出身の“よそ者” 南阿蘇の観光再生けん引、周囲も期待

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観光案内所で観光客に応対する久保尭之さん(右)=12日、南阿蘇村

 「よそ者」を自任する若者が、熊本地震で大きな被害を受けた南阿蘇村で観光を基軸とした地域づくりに取り組んでいる。みなみあそ村観光協会の事務局長に就任した久保尭之さん(27)は、鹿児島県出身の元エンジニア。「観光地型の農村の魅力を発信し、多くの人に訪れてもらいたい」と力を込める。

 今年の大型連休から、同村の道の駅「あそ望の郷くぎの」内にある田んぼを利用して始まったカヤック体験。親子連れらでにぎわう中、笑顔で来場者に接する久保さんの姿があった。

 アイデアを温めていたのは、道の駅を運営する「あそ望の郷みなみあそ」の藤原健志社長(61)。久保さんが会場の設営などを引き受け実施にこぎ着けた。今後も土、日曜日と夏休みに計画しており、久保さんは「観光客回復に弾みが付けば」と期待する。

 久保さんは東京の大学在学時、東日本大震災の被災地で食産業の復興を支援するNPOのメンバーとして活動した。卒業後は大手重工メーカーに入社し、火力発電所の設計などを手掛けるエンジニアとして働いた。

 地元で転職しようとしていた矢先に熊本地震が発生した。この年の5月までの予定で支援活動を始めたが、観光業や農業の被害の深刻さを目の当たりにして残留を決意。NPO時代のネットワークやエンジニアとしての実務経験を生かし、レストランバスの運行実現などに奔走した。

 昨年12月には、空席だった観光協会の事務局長に就任。田んぼカヤックをはじめとする体験型イベントの開催や、阿蘇地域の観光連携に力を入れる。久保さんへの地元の観光業者の期待は大きく、藤原社長は「インバウンド(訪日外国人)誘客などでも中心を担ってほしい」と話す。

 「主役は地域の人たち」と裏方に徹していたが、地震2年を経て心境の変化も出てきたという。南阿蘇村は地震後の人口流出で人手不足が深刻化しており、「自分が前向きに取り組んでいる姿を発信することで人材が集まるようになれば」とテレビ出演なども引き受けるようになった。

 現在は借家住まいだが、「自分と同じような仲間を受け入れられる拠点にしたい」と、近く村内に一軒家を購入する予定だ。「南阿蘇村を定期的に訪れる人が増えるような仕組みづくりを考えたい」と次なる一手に思いを巡らせている。(高森支局・田上一平)

(2018年5月18日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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