京都企業、カリスマ経営から転換へ 相次ぐ非創業家の社長登用

創業者やその親族がトップを務める大手企業で非創業家への社長交代が進んでいる(敬称略)

 創業者やその親族がトップを務めてきた京都、滋賀の大手上場企業で、非創業家の幹部を社長に登用する動きが広がっている。業容拡大や事業環境のめまぐるしい変転で、若い人材の活用や経営における役割分担が必要になっているためだ。オーナー社長が強力なリーダーシップと求心力でけん引する経営モデルは、転換点に差し掛かっている。

■ビジネス環境激変、業容拡大が作用

 非創業家への社長交代は今年に入ってから相次いだ。堀場製作所では1月、社長を26年務めた堀場厚会長(70)の後任に足立正之氏(55)が就任。2月には、日本電産が1973年の創業以来初めての社長交代を発表した。創業者の永守重信会長兼社長(73)が後継指名したのは、3年前に入社した吉本浩之副社長(50)だった。

 4月には、ワコールホールディングス(HD)が、塚本能交社長(70)が会長となり、安原弘展副社長(66)が後任に就く31年ぶりの社長交代を発表。ロームは、同社初の非創業家社長である澤村諭氏(68)から藤原忠信専務(64)へのバトンタッチを内定した。

 平和堂でも昨年5月、創業者の長男で社長を28年務めた夏原平和会長(73)の後任として、平松正嗣社長(60)が初めての非創業家トップに就任した。

 創業家が影響力を持つ企業で相次ぐ社長交代には、社業拡大に加え、ビジネス環境の変化が作用している。

 日本電産は、国内外でM&A(企業の合併・買収)を繰り返して業容を拡大。拠点は43カ国に広がった。永守氏が今春から大学経営に乗り出したこともあり、「世界を走り回る体力は限界に近い」(同氏)として、吉本次期社長に海外事業を任せることを決断した。

 ワコールHDも、国内の下着市場が縮小する中、海外やインターネット事業の強化を急いでおり、「海外駐在が長く、アパレル全体を見渡す力がある」(塚本社長)と見込む安原氏に針路を託す。

 環境変化に直面するのはロームも同様だ。創業者の佐藤研一郎氏の後を継いだ澤村社長は、主力の半導体の有力顧客だった国内家電メーカーの事業再編が進む中、自動車や産業機器向けの販路を切り開いた。藤原次期社長の下でも、市場拡大が見込まれる電気自動車や自動運転の分野で需要取り込みを図る。

 平和堂は、総合スーパーがドラッグストアやネット通販の台頭で防戦に立たされている。平松社長は小規模な食品スーパーの出店拡大に活路を見いだす。

■カリスマ性、求心力…影響力残す企業も

 非創業家の社長が次々に誕生する一方、創業者や創業家が最高経営責任者(CEO)にとどまり、引き続き経営に強い影響力を保つケースも多い。カリスマ性や求心力で組織を束ねる役どころだ。

 堀場製作所と平和堂は、社長交代後も前トップが代表権を持つ会長兼CEOに就任。6月の株主総会で役員改選をはかる日本電産も同様の体制で、ワコールホールディングスは塚本能交社長が会長となる。ロームは澤村諭社長が相談役に退くが、創業者の佐藤研一郎氏は取締役に残る。

 「これまで船の舳先(へさき)にいたが、(舵(かじ)を握る)ヨットのスキッパーのように全体を見渡す」。堀場製の堀場会長は、社長交代の意図をこう説明した。海外事業が広がる中、創業家としてグループ全体の指揮を執り、企業精神の浸透を担う。

 6月に社長交代する宝ホールディングスも創立者の1人、故大宮庫吉(くらきち)氏に連なる大宮久会長(74)が留任する。副会長に就く柿本敏男社長(67)は「グループ従業員をまとめるには欠かせない」と存在の大きさを語る。

 京都大経営管理大学院長の原良憲教授(イノベーション・マネジメント)は「創業家や経営理念は企業のより所。難局でこそ大きな影響力を発揮する」と指摘。「非創業家への経営移譲は、その『企業らしさ』が今後もしっかり引き継がれると判断したからではないか。京滋の企業経営は新たなステージに入ったと言える」と見る。

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