仙人画家?! 熊谷守一夫婦が愛される理由『モリのいる場所』

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第412回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、5月19日から公開となる『モリのいる場所』を掘り起こします。

山﨑努×樹木希林が夢の初共演!

没後40年を迎えて、いま注目を集めている画家がいるのをご存知でしょうか。30年間ほとんど家の外に出ることなく、庭に生息する花や動物をモチーフに絵を描き続けた熊谷守一です。

文化人としては最高の栄誉とも言える文化勲章が内定しても辞退し、二科会などの美術団体への所属も途中でやめてしまい、孤高の道を歩んだ洋画家。晩年は白くて長いあご髭をたくわえ、まるで仙人のような風貌。

そんな伝説の画家・熊谷守一を主人公にした映画が『モリのいる場所』。都内の自宅で妻と一緒に過ごした晩年に焦点を当て、ある夏の穏やかな1日が描かれています。

昭和49年、東京・池袋。自宅の庭には草木が生い茂り、虫や花、動物など、熊谷守一(通称モリ)の描く絵のモデルとなる生き物たちが住み着いている。

モリは30年以上、その庭の生命たちをじっと眺めるのを日課にしていた。彼と妻の秀子が暮らす家は、老夫婦に魅せられた来客でいつも賑やか。モリを撮り続けることに情熱を燃やす若い写真家、看板を書いてもらいためにやって来る温泉旅館の主人、画商さんに近所の人、そして得体の知れない男。

今日もまた、モリとモリを愛する人々のちょっと可笑しな1日が始まる…。

メガホンを取ったのは、『モヒカン故郷に帰る』や『横道世之介』などで知られる沖田修一監督。『キツツキの雨』の撮影中、山﨑努から熊谷守一の存在を教わった沖田監督は、守一について調べるうちに「いつか山﨑努さんが演じる守一を見てみたい」という思いが湧いたことから、本作を手がけることになりました。

モリとその妻・秀子を演じるのは、日本映画界の至宝、山﨑努と樹木希林。二人が並ぶ姿は演技を超えた神々しささえあり、ただそこにいる姿を観るだけで温かな気持ちに包まれます。

さらに加瀬亮、吉村界人、光石研、青木崇高、三上博史、吹越満、池谷のぶえ、きたろう、林与一と、あらゆる世代の実力派俳優たちが集結。モリの1日を賑わせています。

いま何故、熊谷守一夫婦が改めて注目されてるのか。それは世間の常識に捉われずに自分たちの生活を慈しみ、“生きる喜び”が作品から伝わってくるからではないでしょうか。

明るい色彩と単純な描画で表現されている守一作品は一見ユーモラスなので、仙人のような彼のビジュアルも相まって、悩みひとつなく気楽な人生を送ってきたような印象を受ける人もいるかもしれません。しかし実際は、貧困や家族の死を体験するなど、決して平坦人生ではなかったと言われています。

それでも97年間、ひたすら生き、描き続けた画家の人生がいかに愛おしく豊かなものだったかを、本作は観る者に語りかけてくれるのです。

モリのいる場所
2018年5月19日からシネスイッチ銀座、ユーロスペース、シネ・リーブル池袋、イオンシネマほか全国ロードショー
監督・脚本:沖田修一
出演:山﨑努、樹木希林、加瀬亮、吉村界人、光石研、青木崇高、吹越満、池谷のぶえ、きたろう、林与一、三上博史 ほか
©2017「モリのいる場所」製作委員会
公式サイト  http://mori-movie.com/

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