ハンセン病と長島の歴史を民話に

©株式会社山陽新聞社

 郷土民話の語り部グループ「せとうち語りの会うぐいす」(事務局・瀬戸内市)は、国立ハンセン病療養所2園がある長島(同市)の歴史を、民話として語り継ぐプロジェクトを始動させた。瀬戸内海の離島で人権侵害に耐えながら生き抜いてきた入所者らの証言を集め、その思いを次世代に伝えていく。

 うぐいすは1月、瀬戸内市内の主婦ら会員14人で本格的な活動をスタート。「地元ながら、しっかりと見つめることが少なかったハンセン病問題に目を向けたい」と、国の誤った隔離政策の歴史と療養所の入所者たちの「人間回復の闘い」を伝承していくことを決めた。民話の形を選んだのは、方言を含めた素朴な口伝には、聞く人の心に訴えかける力があると考えたからだ。

 メンバーは5月中旬、島内にある長島愛生園と邑久光明園を訪れ、愛生園で入所者自治会の中尾伸治会長(83)と面談した。1948年、13歳の時に強制収容された中尾会長からは「患者作業」として課された農地開墾や重症患者の看護、断種の実態といった証言を聞き取った。

 文献や両園で得た情報も盛り込んで物語をまとめ、瀬戸内市内で11月に開くハンセン病をテーマにした講演会で披露する予定。

 両園の入所者の平均年齢は85歳を超える。将来的に入所者自身の証言で伝えることが難しくなっていく中、うぐいすの脚本担当・小林鈴代さん(60)=同市=は「当事者の肉声に勝るものはないが、民話の力を借り、島の歴史を紡ぐお手伝いをしたい。それが同じ地域に生きるわれわれの使命」と言う。

 ハンセン病問題を巡っては「隔離の島」の歴史を風化させず、後世に残していこうと、両園と大島青松園(高松市)の瀬戸内3園の世界遺産登録を目指す運動が始まっている。中尾会長は「私たち入所者だけでは孤独な運動になってしまう。地元の方々の協力はとてもうれしい」と話している。

あなたにおすすめ

以下の「同意する」ボタンを押すことで、またはこのページ内のリンクをクリックすることで、ノアドット株式会社が別途「プライバシーポリシー」に定める「アクセスデータ」を取得し、利用することを含む「nor.利用規約」に同意することになります。お客様は、プライバシーポリシー記載の所定の手続きにより、アクセスデータを管理できます。