エンディングノート

 人生は一度限り。それは分かっていても、日常の忙しさに紛れて、自分の生き方をきちんと考えてみる機会はなかなかないものだ▲エンディングノートを付けてみることが、その一つのきっかけになるかもしれない。エンディングノートといえば、介護や葬儀など人生の締めくくり方の希望を身近な人に向けて記す覚え書きというイメージだが、それだけではない。刊行されているノートにも決まった形式はない▲その一つを開くと、さまざまな項目が目に飛び込む。「中学生の頃の夢」「心に残る20代の思い出」…。記入しながら昔の喜怒哀楽が胸によみがえる人もいるだろう▲今後のライフプランを記すこともできる。10年後や20年後、住居や仕事をどうするか。「マイホーム購入などの予定を書いてもいい。若い人こそ長いスパンで人生を考えてほしい」と言うのは、長崎市の1級葬祭ディレクター、沼光美樹さん▲1冊のノートに、これまでの、これからの、自分の人生のエッセンスが詰まる。そう思えば、ノートを前にあれこれ考えを巡らせることが、今後の人生を充実させることにつながるだろう▲そうして、その先に人生の終焉(しゅうえん)がある。懸命に生きてきた人が織りなす輝きと実りが、ノートにつづられて残される。そんな生き方ができたらいいと思う。(泉)

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