ザギトワ選手への秋田犬贈呈、安倍首相「横取り」批判も

By 太田清

ザギトワ選手に贈呈される秋田犬の子犬=3日午後、秋田県大館市

 平昌冬季五輪フィギュアスケート女子の金メダリスト、ロシアのアリーナ・ザギトワ選手(16)が「私の夢だった」と語っていた秋田犬がいよいよロシアに送られ26日に、モスクワで贈呈式が行われる。ザギトワ選手は五輪前に新潟で調整していた際に雑誌の写真を見て一目で秋田犬を気に入ったというが、この話を聞いた秋田犬保存会(秋田県大館市)が贈呈を決めた。一時はモスクワの賃貸アパートの狭さが大型犬の秋田犬を飼う上での問題となるとの懸念もあったが、一部報道によると、リンクでの飼育を許可されたことで解決したようだ。 

 ところが、当初は保存会の代表とザギトワ選手、関係者だけの行事予定と伝えられていたが急きょ、プーチン大統領との首脳会談のため訪ロする安倍晋三首相が出席することになった。「日ロの友好を演出する」というのが目的らしいが、本稿はコラムなので筆者の個人的考えを言わせてもらえれば、何かあざとさを感じてしまった。 

 秋田犬贈呈のニュースは日本でも大きく取り上げられ、好感を持って受け止められた。18日に16歳になったばかりのザギトワ選手は五輪当時、わずか15歳で金メダルを獲得。「日本レストランを持つのが将来の夢」という日本びいきのロシアの「新星」が、秋田犬を飼いたいと母親に相談。「五輪でいい演技をすれば」という母親の条件を見事満たし、保存会が好意でプレゼントを申し出たという心温まる話だったからだ。  

ザギトワ選手のインスタグラム「きょう、日本に来て4日間で初めて散歩に出ました。たくさん犬がいて、一緒に写真を撮らずにはいられなかった」

 それが突然、安倍首相が出席することが決まり、半ば公式の行事に格上げされてしまった(ロシアの一部メディアは、プーチン大統領も参加する予定と報じていたが、参加しなかった)。秋田犬を贈呈するのはあくまで保存会なのに「だれが子犬を贈呈するかを巡って激しい争いが展開された」(情報サイト、スプレトニク)とロシアメディアにもからかわれる始末だ。 ザギトワ選手に関するロシアのSNSでは「首相が秋田犬を贈る」と誤ったコメントも。

 ニュースを報じた日本のサイト上でも、「横取り」「人気取り」などのコメントが多数寄せられた。願わくは安倍首相は、テレビカメラの前で式典の「主役」である秋田犬とザギトワ選手より目立つことだけは避けてほしい。 

 ザギトワ選手に贈られる秋田犬は生後約3か月の雌で、ザギトワ選手が候補の犬の写真を何枚か見て決めた。名前は「マサル」と決めており、同選手は「マサルは日本語で『勝利』を意味するの。雄の名前だけど、気に入っているわ」とその到着を心待ちにしていた。 (共同通信=太田清)

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