『ゲティ家の身代金』 支払いを舅に拒否され、八方塞がりの母親役が素晴らしい

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 ジャン・ポール・ゲティという、アメリカの伝説の大富豪のお孫さんに起きた実際の誘拐事件をリドリー・スコット監督が映像化した作品。孫が誘拐されたゲティは「孫に支払う金はねえっ!」と支払いを拒否。 私はもう、母親の気持ちになってイライラしっぱなし。自分の舅が、ここまでケチだったら絶対に耐えられません。涙を見せない母としての強さをミシェルは感情を抑えた演技で表現します。プライベートでも、元婚約者ヒース・レジャーを亡くした後に一人娘を育てたタフな母親でもあるミシェル・ウィリアムズが、八方塞がりの苛立ちと、絶対に泣かない芯の強さを表現する素晴らしい演技でした。

 本作の中で、誘拐された孫のポールに同情しちゃう誘拐犯を、フランスの有名俳優ロマン・デュリスが演じているのですが、彼もすごくいい! 彼の「普通なら強盗してでも金集めるだろ!」というセリフが胸に響きました。

 実は、この作品、全米での公開直前にゲティ役のケヴィン・スペイシーがセクハラで降板となる大スキャンダルに襲われました。そこで急きょ代役を演じることとなったのが、名優のクリストファー・プラマー。しかもスコット監督は公開日をずらすこともなく、たった9日間のうちに代役シーンを撮影。その結果、プラマーはアカデミー賞にノミネートされるという快挙を果たしました。本当に素晴らしい作品に仕上げたスコット監督の仕事ぶりに大拍手を送りたくなります! ★★★★★(森田真帆)

監督:リドリー・スコット

出演:ミシェル・ウィリアムズ、マーク・ウォールバーグ、クリストファー・プラマー

5月25日(金)から全国公開

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