金属行人(5月22日付)

 美容、理容、洋裁、仕立て屋…共通する商売道具は?その歴史は古代エジプトの壁画に描かれ、日本では鹿児島県の種子島でポルトガルから鉄砲が伝来時、鍛治職人が製法を教授したとされる。鋏(ハサミ)だ▼その道の専門家を象徴する存在に対し、日ごろの感謝や技術の向上を目指すべく、約40年前に8月3日が「ハサミの日」となった。読経を上げ、焼香する法要が定着しているようだ。ここに今年新たな「ハサミの日」が加わる▼全日本板金工業組合連合会と日本建築板金協会が今春決めた。きっかけは両団体の青年部会総会での提案。将来の担い手が業界に寄せる思いは世代を超えて支持され、宮城県で70回の節目を迎えた先週17日の全国大会に華を添えた▼会場の仙台市で石本惣治大会会長がハサミの音の逸話を披露した。板金ハサミは「チョキ、チョキ」でなく「チョキン、チョキン」。手入れが行き届かないと「シャッキン、シャッキン」とユーモアたっぷり▼記念日には建築板金の知名度と地位の向上を誓う。「太陽に一番近いところが主戦場の板金業だからこそ、明るい未来につながる話題を積極的に提供していけるのではないか」。かつて石本氏のインタビューで聞いた言葉が記憶に新しい。

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