「飛行距離無限」(プーチン氏)のはずの露ミサイル、35キロしか飛ばず

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太田清

47NEWS編集長

太田清

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共同通信社入社後、広島支局、大阪社会部、外信部、経済部、ベオグラード支局、モスクワ支局、ローマ支局などを経て2016年より現職。イトマン事件、阪神大震災、コソボ紛争、ユーゴ空爆、モスクワ劇場占拠、アフガン紛争、ギリシャ財政危機、東日本大震災などを取材。

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大型スクリーンで新型兵器を発表するロシアのプーチン大統領(右端)=3月1日、モスクワ(タス=共同)

 米CNBCテレビは23日までに、ロシアが開発している原子力エンジンで飛行する巡航ミサイルの発射実験がこれまで4回行われ、すべて失敗したと報じた。「米国の情報機関リポートの内容を直接知りうる人物」の話として伝えた。 

 同ミサイルは、プーチン大統領が3月の年次報告演説で公表した最新兵器の一つで、原子力エンジンで飛行距離を延ばせ、低高度かつ複雑なルートを飛ぶためミサイル防衛(MD)システムのレーダーにかからない。大統領はミサイルが米国本土を目指すCG映像を映し出す大型スクリーンの前で「飛行距離は事実上無限で、世界中のどの地点にでも到達できる」と強調、どのようなMDでも迎撃できないと豪語した。核弾頭の搭載が可能な極超音速ミサイルと並ぶ同ミサイル開発で、米国と北大西洋条約機構(NATO)のMD網は無力化され「ロシア封じ込めは失敗した」と宣言していた。 

 実験は昨年11月から今年2月の間に行われ、米情報機関の分析によると、最も成功した実験でも2分間あまり、約35キロ飛んだだけでコントロールを失い、おそらく領海か接続水域に落下。最短では4秒しか飛ばなかった。落下に伴う放射能汚染の有無は不明。ミサイルは当初、液体燃料のエンジンで飛び、その後原子力に移行するが、いずれの実験でも原子力に移行する前に落下。実験は時期尚早だとする開発陣の反対を、政府高官が押し切り実行されたとされる。 

 同ミサイルについては、プーチン氏の発表直後から、原子力を推進力とするミサイルはこれまでなく開発には相当な時間が見込まれる上、そもそもそこまで長距離を飛行する巡航ミサイルが何のために必要なのかという疑問が軍事専門家から上がっており、MD開発を進める米国をけん制するためだけの開発との見方も出ていた。 

 報道について、ロシアのペスコフ大統領報道官は「大統領のいうことを聞いて、彼を信じてください」とだけ述べた。 

 プーチン大統領の3月1日の連邦議会に対する年次報告演説では経済、社会、貧困対策などに重点が置かれていた従来と異なり、演説の多くが米国に対抗する最新の戦略兵器の紹介に費やされ、3月18日の大統領選をにらんで、「強いロシア」を印象づけることが狙いだったとみられている。 

 35キロしか飛ばないのでは「世界中のどの地点」どころか、広大なロシアの領土すら離脱できないだろう。米情報機関のリポートは当然、トランプ大統領の元にも届いているはずで、シリアに対する2度目の軍事行動前の4月、ロシアに対し「軍拡競争をやめないか?」と皮肉たっぷりにツイートした余裕ぶりも、こうした情報が背景にあるのかと考えさせられてしまう。 (共同通信=太田清)