この連載のおかげで、近年の音楽DVDのリリース情報はだいたいさらっているつもりだけれど、日本人の、しかも現在進行形のアーティストのドキュメンタリー映像作品というのは、とってもレアな存在だと思う。
3人組ロックバンド「椿屋四重奏」で多くの音楽ファンを魅了した後、2011年よりソロ活動をスタートさせた中田裕二。彼の6作目のアルバム『thickness』から7作目『NOBODY KNOWS』リリースまでの約1年間に密着したのが本作だ。各地でのライブ映像やレコーディング時の様子を交えながら、故郷熊本や仙台を歩くシーンもあり、見どころ満載だ。
一人のものはふんだんに、親友・中村マサトシとの対談もあり。各地で実施されるインタビューを通し、中田の今の率直な思いが語られていることが伝わってくる。音楽と共にある中田の日常すら、透けてみえてくる。こういうコンセプトの作品、すごくいいなあ。他のアーティストのものも見たくなる、お手本のような一本ではないだろうか。
(テイチクエンタテインメント・4500円+税)=玉木美企子