【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(27)】〈ワコースチール〉建機、セグメント向けが2本柱 現場力向上、ROS10%達成

 ワコースチールは、関東地区における新日鉄住金系の厚板加工・製罐大手。住友建機向けを主体に、建機部品の切板から二次加工、溶接・製罐までの一貫加工を中核とする。

 また、最近は道路トンネルに使用する鋼製セグメント用部材加工事業を建機向けに次ぐ第2の柱と位置づけ、主にこの二つの部門を効率的に生産できる態勢を整えてきた。このほか車輌ホイール部材やクレーン部材の加工も手掛ける。

 設立は1962(昭和37)年9月。旧住友金属工業が和歌山製鉄所を立ち上げた翌年に、住金・和歌山で製造する熱延二級コイルのレベラー加工を目的にスタートした。

 その後、関東進出や厚板溶断加工の開始、グレーチングなど建材商品の製造・販売や営業拠点の全国展開など業容を拡大するが、バブル崩壊後の業績悪化で事業の再構築を迫られる。不採算事業からの撤退、工場・営業所の閉鎖、大幅な人員スリム化を実施し、工場を関東のみとした。現在の本社工場である。

 2014年4月から現在の清水健五社長が陣頭指揮を執ったのを機に次々と現場改革を断行する。まずは「既存の切断機台数を増やさずに1台当たりの実働効率を高めることで切板加工能力を2割アップ」させる独自プロジェクトに着手。そのカギとなるのが「有効土間面積の拡大」であることから、設備レイアウトの変更や長期滞留在庫の一掃のほか、構内遊休地に新たな工場建屋(9号棟)を建設し、セグメント部材加工用のNC大型5面加工機(高速マルチセンタ)を導入した。

 老朽設備の劣化更新も積極的に行い、門型ファイバーレーザ切断機やNCドリルマシン2号機を稼働させ、成果につなげている。

 その一方で構造的な販売不振・不採算となっていた薄板事業から撤退。稼働から半世紀以上を経過した熱延レベラーラインを撤去し、その跡地を厚板事業用地として活用することで有効土間面積をさらに増床した。

 厚板加工に特化した昨年を「厚板専業元年」と称し、セグメント需要期の本格化に向け、これまで推し進めてきた「強い現場づくり」「闘う集団づくり」を実現しようと全社の士気も上がる。

 ハード面だけでなくソフト面では「5S/6T活動」(5S=整理・整頓・清掃・清潔・躾、6T=定位置・定路・定量・定色・定表示・チームワーク)や「7つのムダ撲滅運動」((1)手持ちのムダ(2)つくり過ぎのムダ(3)運搬のムダ(4)動線のムダ(5)不良手直しのムダ(6)さがし物のムダ(7)在庫のムダ)を展開する。

 これら安全確保を最優先した現場力強化・コスト改善への取り組みは業績にも反映され、17年度は加工販売量で16年度実績比17・4%増。ROS10%を達成した。

 今年度に入り新基幹システム「WaFuLeS(ワコーフューチャーリーディングシステム)」が稼働。従来のシステムに置場管理やトレーサビリティなどを強化した機能を付加し、実績のリアルタイム入力も可能とした。

 4年間、前線に立って会社をけん引してきた清水社長。この間の社員の頑張りをねぎらいつつ、自らの理想と照らし合わせ「8合目まで到達し、ようやく山頂が見えてきた。しかし、ここからの登りが一番つらく険しい。安全最優先を基盤として一人ひとりがモーターを搭載し、自らの力でテッペンまで登りつめよう」とハッパをかける。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

 企業概要

 ▽本社=千葉県成田市所

 ▽資本金=5億335万円(新日鉄住金の出資比率63・9%)

 ▽社長=清水健五氏

 ▽売上高=64億6千万円(18年3月期)

 ▽主力事業=建機・産機や土木向け主体の厚板溶断加工・製罐

 ▽従業員数=約150人(18年3月末)

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