pixiv・永田寛哲氏、Pを務める「虹コン」女性アイドルとの間でパワハラ&名誉棄損訴訟

pixiv・永田寛哲氏、女性アイドルとの間でパワハラ&名誉棄損訴訟

絵描きさん向け大手SNS『pixiv』を運営するピクシブ社代表取締役・永田寛哲氏が、自身のプロデュースする『虹のコンキスタドール(以下、「虹コン」)』(現在の所属はディアステージ社)をすでに脱退しているAさんに対し名誉棄損の訴訟を起こしていたことが分かりました。何の名誉棄損裁判か? は以下に詳述します。

また、逆にAさんからも、永田氏と当時所属していたピクシブ社とその子会社であるピクシブプロダクション社、ディアステージ社に対して、永田氏が行ったセクハラ行為に対して損害賠償を求める訴訟を提起。アイドル事業とセクハラを巡る問題は一気に法廷闘争に発展してきました。

ピクシブ社を巡る混乱についてはすでにヤフーニュースで既報でしたが、問題の核心はやはり永田氏と自身の手掛けるアイドル事業、そこで夢を持って頑張る女性たちの間でのマネジメント上の問題となっているようです。

『pixiv』という聖域で、代表・永田寛哲氏が仕掛けた人事と混乱(訂正とお詫びあり)(山本一郎) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20180506-00084885/

虹のコンキスタドール(魚拓)

https://megalodon.jp/2018-0506-2317-28/2zicon.tokyo/profile

本日18年5月7日、永田氏がAさんを名誉棄損で訴えた件で東京地裁の第一回口頭弁論期日でしたが、両者主張から事実関係を眺めてみると、アイドル事業とそこで頑張る女性の夢が、いろんな「大人たちの思惑」で壊されていく過程を見るようで胸が痛みます。

うら若きアイドル稼業を続けてきたAさんは2015年12月ごろ、大学受験も視野に入り、アイドルグループから脱退するかどうかで悩んでいました。そこで、当時『虹コン』の総合プロデューサーであった永田氏に相談したところ「京都旅行にでも行っておいで」と言われたようです。

その京都行のチケットを品川駅で永田氏から受け取る… はずが、なんと永田氏もこの京都旅行に同伴し、永田氏とAさん二人で京都旅行をすることになってしまいました。Aさんは立場やその後のことを考えると「来ないでください」と言うことができず、同じ宿の同じ部屋に布団を並べて永田氏と就寝することになりました。口頭弁論で、永田氏側代理人はこの事実関係を認めています。

Aさんは当時未成年で、アイドルになる夢を持って上京してきていたため、地元に住む親元から離れて暮らしており、またアイドル稼業だけでは十分な収入を得ることができず困っていたそうです。2015年当時、「虹コン」の活動費補助は月3万円ほどで生活が成り立たなかったため、プロデューサーである永田氏に「アルバイトをしたい」と相談をしたところ、永田氏がこれを許可せず「僕にマッサージをしてくれたら、アルバイト料を支払うよ」などと言って、2016年春ごろまでの約半年間、永田氏の指定する場所までAさんが出向いて永田氏の全身を一時間マッサージして一回当たり5,000円をもらっていた、という話があるようです。これも、口頭弁論で永田氏側代理人は事実関係を認めています。

さらに、すでに「虹コン」を脱退していたAさんに永田氏は今年2018年1月7日の「虹コン」ライブにゲスト出演するよう依頼しています。すでに地元に戻っていたAさんは上京しましたが、なぜか永田氏は青山一丁目にあるタワーマンション内の永田氏自宅を宿泊場所として提供。実際、永田氏夫妻が寝泊まりしており、永田夫人も同宿しているのであれば問題は起きないだろうとAさんは思っていたそうです。しかしながら、その浴室脱衣所周辺に盗撮カメラが設置されていることをAさんが発見。激しく動揺しつつも、永田夫妻が同じマンション内に寝泊まりしているところで声を上げると騒動になるとAさんは気遣い、その際は泣く泣く映らないようにして入浴したとのことで… これは、永田氏側は盗撮カメラがあったのかどうか、盗撮カメラで撮影されていたのかどうかは主張不明ながら一部事実と異なると反論しているようです。

未成年を扱うアイドル事業において、断り方を知らず、活動の今後に不安を感じる若い女性に対して、ある種の強要や強制わいせつなどを行っていたとするならば、単に当事者間の問題というよりはアイドル周辺ビジネスを手掛ける各社も胸に手を当てて考えるべきものがあるのかもしれません。

そもそもなぜこんな裁判になったのかという経緯がまた微妙な問題を孕んでいます。

さすがに浴室脱衣所に盗撮カメラが置かれて泣き寝入るのも問題だということで、Aさんが地元の弁護士に依頼してピクシブ社やディアステージ社、ピクシブ社の親会社にあたるアニメイト社に対して損害賠償請求の内容証明の送付を行ったことが端緒にあります。いったんは、永田氏とディアステージ社が「事実関係の真偽はさておき」謝罪と賠償を行うことで示談が双方代理人を通してまとまりかけていました。

ところが、和解寸前から一転、永田氏はAさんとAさんが起用した弁護士2名に対して名誉棄損裁判を起こします。一瞬「は? 逆じゃね?」と思いますが、今回5月7日の口頭弁論は間違いなく原告が永田氏、被告がAさんと弁護士2名です。その内容とは、この問題を解決するためにAさんが送った内容証明がアニメイト社やピクシブ社監査役宛になっていたため、この件で永田氏が関係者から強い叱責を受けたので名誉棄損だ、と訴えたというのが今回の経緯です。

永田氏が他の「虹コン」女性メンバーほかにも盗撮を過去に仕込んだ経緯があったのかもしれませんが、Aさんとは無関係に永田氏の自宅や永田氏提供の「アイドル寮」での盗撮話が所属タレントだけでなく多くの関係メディアの知るところとなりました。示談のまとまる前から実際に動き始めた週刊誌記者が永田氏サイドに取材依頼をかけたことで、Aさんからメディアに情報が漏れたのではないかと永田氏が疑ったようです。詳細は永田氏やピクシブ社が取材を拒否しているため分かりませんが、少なくとも今回の口頭弁論でも被告となったAさん代理人から「メディアからの接触がこの名誉棄損裁判の引き金になったのか」と質問が出ておりましたが、永田氏代理人は次回期日に回すということで明言を避けていました。

当然、Aさんは進めていた示談も成立しなかったわけですので、今度はセクハラ・パワハラに対する問題で、永田氏だけでなく、ピクシブプロダクション社や、事実上活動の看板を担ったピクシブ社、また今回のライブを実施したディアステージ社と被告を拡大し、裁判を起こすことになったという経緯であります。この応訴・別訴によって無事訴訟合戦となりました。

もちろん、永田氏側にも言い分はあるでしょうし、口頭弁論で双方主張をする中で事実関係はより明確に分かっていくものと思います。

しかしながら、筆者のような子供を持つ親として、重い主張もあります。Aさん代理人はピクシブ社監査役に対して送った内容証明の中で「この事件(18年1月6日、7日)以降、依頼人(Aさん)はショックから立ち直れず、食事や睡眠を満足に摂ることもできず、体重はわずか10日で4kgも落ちてしまいました。また、1月13日及び14日に実施された大学入試センター試験では、1月13日に永田氏から来たLINEを読んでフラッシュバックして嘔吐してしまい、受験をすることができませんでした」と悲惨な状況を書き綴っています。もしも、我が子が夢を実現するために頑張っていたところを正面から踏みにじられ、心身ともに厳しい状態に追い込まれることがあるのだとすれば、たとえ相手が誰であろうと声を枯らして戦いに臨みたいと思う気持ちは誰しもが持ちうると思うのです。巷では「 #MeToo 」運動も出てきている中で、被害に遭って泣き寝入りをせずきちんと大声を上げることは大事なことです。

「虹コン」においては、Aさん以外にも永田氏からの性的嫌がらせを受けたと訴え出る動きがあるようで、Aさんの紛争を知った関係者が本件とは別に並行して警視庁に相談に行くなどの動きが出てきています。当時のピクシブプロダクション社での京都アイドル随伴旅行や金欠アイドルによる訪問全身マッサージなどが横行していたのだとするならば、永田氏の側も、名誉棄損裁判以前にやるべきことがあるのではないかと強く感じる次第です。

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