北朝鮮、南北高官協議の中止で中国のメンツ丸潰れ…米朝の直接交渉で「韓国不要論」も現実味

写真:ロイター/アフロ

一方的融和ムードに湧いていた北朝鮮問題であるが、16日未明、韓国に対し、南北高官協議の中止を伝え、「(トランプ政権が)一方的に核放棄だけを強要しようとすれば、来たる朝米首脳会談に応じるか再考するほかない」として、米朝首脳会談の中止の可能性を示唆した。

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https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20180516-00392167-fnn-int

これはボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が主張する核廃絶の方式『リビア方式』に対するけん制であり、北朝鮮側の駆け引きの一部であると考えられる。タカ派で知られる米国ボルトン補佐官は、北朝鮮の核とミサイル放棄に関して、リビア方式(米国など他国の専門機関が関与し、北朝鮮内にある核とミサイルの材料や開発拠点などすべての排除を行い、それが確認できた時点で金融制裁を解き、同時に経済支援を与える)の採用を主張してきた。これに対して、北朝鮮側の反発もないことから、すんなり進むという楽観的観測が支配していたわけである。しかし、今回、北朝鮮がこれに異を唱えたことで、これがすんなり進まない可能性も出てきたのだ。

そして、今回の発表のタイミングは中国を意識したものという見方もある。実は、15日から19日にかけて、劉鶴副首相が米国を訪問し、ムニューシン財務長官らと両国の貿易摩擦問題について協議することになっていたからである。北朝鮮問題で仲裁役に回っている中国であるが、北朝鮮は中国に対しても強い不満を持っているといわれ、中国への当てつけ的な意味でこの発表を行ったという見方もある。

米国はこれまで、中国に対して北朝鮮問題の解決を求め、北朝鮮問題が解決するならば貿易摩擦問題での宥和的ディールもできるとしてきたわけである。前回言及したZTE問題など米中の貿易摩擦交渉が佳境に入る中で、今回の発表が中国に不利になることは間違いなく、中国としてはメンツをつぶされた側面も大きい。

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また、今回、韓国との高官協議を中止したことにはほかの理由もある。北朝鮮はこれまで韓国との融和ムードを利用し、米国を直接交渉の場に引きずり出した。また、中国も同様で今度は米朝会談を利用する形で関係改善を行ったわけである。米朝と直接交渉が始まった今となっては韓国が不要になったともいえるわけだ。そして、将来、金正恩氏が政権を維持するために最も邪魔な存在になるのが韓国国民でもある。なぜならば、韓国は民主主義の国であり、普通選挙が行われている国であるからなのだ。将来的な統一に向けての動きや人の往来が始まり、自由と人権が広まれば彼は今の地位を維持できない可能性が高いのだ。

この様に考えると、北朝鮮の核とミサイル放棄と南北統一は別問題であり、一筋縄では解決しない問題であるといえる。米国は米朝首脳会談が失敗に終わった場合、即時の軍事オプションもありうるとしており、融和ムードの陰で戦争のリスクも急激に高まっているわけである。

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