【特集】AIが人事管理

「揺れるプライバシー」(2)

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AIセンサー(手前)が「同席」する「Phone Appli」の職場面談のイメージ=東京都港区

 上司は部下にきちんと向き合い、部下は上司に本音で相談できているか。東京のベンチャー企業「Phone Appli(フォンアプリ)」は週1回の職場面談に、2月から人工知能(AI)の「同席」を始めた。

 村田製作所が開発したAIセンサーが、面談時の上司と部下の会話の量やテンポ、声の強弱を解析。率直に対話できているかや、互いの信頼関係の有無をあぶり出す。

 人手が足りないベンチャー企業では離職を防ぐ職場環境づくりが重要課題だ。マーケティング部の北村隆博部長は「コミュニケーションの質を向上させたい」と語る。

 ▽履歴収集

 働き方改革やメンタルヘルスが重視される流れを受け、人事管理にAIを導入する企業が増えている。IT関連法制に詳しい水町雅子弁護士の下には、従業員情報の収集がどこまで許容されるかを尋ねる企業からの相談が相次ぐ。パソコンの使用履歴から生産・営業担当者の行動履歴まで「ここまでやるの」と驚かされる相談内容も多い。

 企業による従業員の監視は今に始まった話ではない。だが、労働運動が盛んだった頃の監視が特定の「問題社員」を狙い撃ちしたのに対し、AIで大量のデータを処理できる今の時代は全ての従業員に網をかける。

 ▽ストレス評価

 東京のベンチャー企業「ラフール」は、AIを活用した職場のストレスチェックを手掛ける。残業時間や性格、健康診断などのデータを解析して部署ごとに離職リスクを評価。トラブルが起きる前に改善策を提案する。「部署の雰囲気やパワハラ上司の存在など、これまで人事部が何となくつかんでいた問題点を明確に把握できる」(結城啓太社長)のが強みだ。

 こうした従業員のデータ解析は有用なサービスを生み出す半面、「職場の人間関係や派閥も分かることに気づいた経営者が想定外の使い方をする恐れがある」(情報セキュリティ大学院大学の小林雅一客員准教授)との指摘も上がる。

 従業員情報の収集を巡っては「社会的に妥当な範囲がまだ明確に定まっていない」(水町弁護士)状況で、プライバシー侵害と隣り合わせの危うさをはらんでいる。