イオンタウン長与 27日で1周年 競合店、個性磨き共存図る

 長崎県西彼長与町初の大型複合商業施設イオンタウン長与が、北陽台1丁目にオープンして27日で1年を迎える。町民はタウンと買い慣れた既存店を上手に使い分けている。競合する業種の地元商店もそれぞれの努力で個性を磨き共存を図る。
 イオンタウン長与は、核店舗のスーパー「マックスバリュ長与中央店」や、家電量販店などの物販、飲食など34店舗。このうち8店舗が県内初出店だ。駐車場は413台分を確保している。
 同社は1年の入場者数、売り上げを公表していないが「テナント客を基にした年間入場者と売り上げは当初の想定通り順調」。約500人の地元雇用にも貢献している。19日に開かれた1周年イベントにも長与の郷土芸能が出演しており「近隣型商業施設として地域の人に喜んでほしい」という。
 同じ長与町の住民でも利用状況はさまざま。タウンに隣接する350区画の団地内に住む女性(41)は、食料品や雑貨を買うため、2日に1度仕事帰りに立ち寄る。「職場のある長崎市で済ませていた。近くなので生鮮食品が傷まなくていい」と出店を歓迎する。
 一方、車で5分の吉無田郷の女性(49)は、クリニックや家電店などを目当てに、月1回程度タウンを訪れる。「昔から慣れた店が食料品は探しやすい」と近くのスーパーに通う。嬉里郷の長与中央市場で毎日買い物する高齢女性は「百貨店の出先がタウンに移転し遠くなった」と話し、車で連れて行ってもらっている。
 県商工会連合会の調査によると、住民が地元で買い物をした割合を示す同町の購買滞留率は31・8%(2016年)。購買力の7割は隣の西彼時津町や長崎市へ流出していることになる。町産業振興課は「出店によって町民の利便性、サービスの向上につながる」と今後の動向を見守る。
 オープン直後の西そのぎ商工会の調査では、客数が「減少」と答えた商店は3割で、6割は「変化なし」。「その後もタウンに関連する経営相談はない」(同商工会長与支部)という。
 タウンと業種が競合するスーパーや菓子店などでは、各店が持つ個性を前面に出し、顧客を引きつける。
 高品質スーパー「ファンタスマーケット」(嬉里郷)もその一つ。同店の品ぞろえは「こだわりのおいしいもの、安心安全なもの」がコンセプト。3年前の開店から毎年、売り上げは着実に伸びている。山崎美子社長は商品を使った料理教室を店内で開くなど、積極的に客のニーズに応える。
 菓子店「ワルツの森ひさ家」(同郷)は「顧客が少しずつ戻ってきている」。ウエディングケーキが好調で、週末は注文に追われている。中村靖社長は「作り手の顔が見える安心感が私たちの強み。背伸びせず、今後も客との対話を大切にしていきたい」と話した。

413台収容の駐車場に特設会場を設け、地元郷土芸能も出演した1周年祭=イオンタウン長与

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