【相次ぎ事業会社黒字化、JFE商事のグループ経営】〈織田直祐社長に聞く〉新中期「足元固めと攻めを両立」 グローバル4極体制「マネジメント強化」

収益構造変化、事業収益を拡大

――4月から新中期経営計画(2018~20年度対象)がスタートしましたが、まずは前3月期の業績から。前中期で目標としていた経常益300億円を超過達成し、330億円に。

 「グループ会社の社長には、その会社の存在意義を問うなど厳しいことも言ったが、それぞれが原点に立ち返り既成概念にとらわれずに考え抜いてくれた。その結果、トレードと事業で分けて考えた場合の当社の事業収益は14年度の45億円から17年度では152億円と107億円増加した。また海外収益も14年度の77億円から17年度は153億円に倍増した」

 「鋼材価格上昇など事業環境好転もあったが、トレード収益の源泉であるJFEグループ関連取引をベースに、国内・海外のグループ会社における体質強化が進み、収益が改善した」

――赤字のグループ会社が減っています。

JFE商事・織田社長

 「国内外のグループ会社94社(国内45社・海外49社)のうち、赤字会社は15年度に17社あったが、16年度は11社、17年度は5社に減った。その中でインドのコイルセンター(CC)はすでに単月黒字化しているほか、ブラジルは事務所を現地法人としなければならない法制上の要因だ。国内で一過性の赤字となった会社はあるが、構造的な赤字の会社はなくなった」

――18年度の赤字・黒字会社数の見通しは。

 「海外2社が赤字の見通しだ。先ほど申し上げたブラジルと原料権益会社のうちの1社。ただ複数の原料権益会社をトータルすると昨年度から黒字化している」

――新中期計画では3年間平均で350億円の利益目標です。

 「前期は経常益330億円だったが、一過性要因の収益を差し引いた実力経常益は300億円と捉えている。それを今年度は330億円に、来年度は350億円に引き上げ、3年後は370億円を目指したい。環境変化があっても安定的に300億円超の利益を確保できる収益基盤を構築し、JFEグループの連結業績に貢献したい」

――どう伸ばしていきますか?

 「足元固めと次の成長に向けた攻めの両立が新中期の方針だ。そのためには、トレード収益を維持・拡大しながら事業収益を拡大し、併せて将来の成長に向けた先行的な人材や資金などの経営資源を投入したい。トレードと事業と両方を掘り下げていく」

――日本を中心に据えたグローバル4極体制のマネジメント強化を掲げています。

 「日本、米州、中国、アセアンのそれぞれで投資すべき分野、伸ばす分野に取り組む。例えば米州ではケリーパイプ社の体質強化、JFEスチールの合弁事業であるCSI社を絡めた薄板建材事業などM&Aも模索し、さらに突き詰めていく。JFEスチールのメキシコCGL合弁新設に対応するような機能を持つことも自然な流れだと考えている」

 「中国のCCでは電磁鋼板の二次・三次加工を手掛けているが、さらに川下展開を強化する。アセアンは自動車・電機に加え、建材需要も捕捉していく。また、国内は新潟スチール、大阪スチール、近江産業など流通再編を手掛けたが、加工流通事業の体質強化は引き続き進めていく。17年度の実力経常利益300億円を起点とし、トレードと事業収益を掘り下げて、3年間で70億円の増益を果たしたい」

――改めて経営ビジョンを。

 「新経営ビジョンを『JFEグループの中核商社として提案力・発信力を高め、お客様と共に成長する、存在感のある企業を目指す』とした。JFEグループの中核商社ということは、自社だけでなくグループの全体最適を考えることが重要だ。これはJFEグループと戦略を共有できる当社固有の機能と言える。JFEエンジニアリング含めてJFEグループとの連携を徹底的に深め、メーカー商社としての機能を極めていく」

 「また、提案力・発信力の向上が当社の課題だ。商社はお客様とメーカーの間に挟まれて厳しい立ち位置にあるが、ポジティブに捉えれば、両者の思いをくみ取り、より良い方策を考えて提案することができる。それが信頼につながる。提案力・発信力を高めながら、お客様と共に持続的に成長する存在感のある企業を目指す」

――新中期の投資額は。

 「3年間で600億円の計画。安全劣化更新をしながら、単純に設備を置換するのではなく競争力を高めていく投資をする」

――ほかの取り組みは。

 「経営基盤の整備にも取り組む。海外事業がこれだけ広がっており、連結ベースの人事施策を構築する必要がある。RPAなど高度IT技術の活用にも力を入れていく」(一柳 朋紀)

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