熊本大と東邦金属など、新マグネ合金ワイヤを開発 超極細、世界記録を大幅更新

 熊本大学先進マグネシウム国際研究センター(センター長・河村能人氏)と東邦金属(社長・三喜田浩氏)は22日、福田金属箔粉工業(社長・園田修三氏)と共同で直径30マイクロメートル(0・03ミリ)という超極細のマグネシウム合金ワイヤの製造に成功し、マグネシウム合金ワイヤの細さの世界記録を大幅に更新したと発表した。

 しかも、作製した超極細ワイヤは、従来の常識を打ち破るような788メガパスカルという驚異的な強さ(降伏強さ)を示し、極細マグネシウム合金ワイヤの機械的強度の記録も大きく更新した。

 マグネシウムは、実用金属で最も軽い金属。他の金属と比べて生体に用いた時の安全性が高い上に、最終的に体内で分解吸収される特性を持つ。このため、体内埋込の医療機器用材料として世界的に注目されている。

 実際の体内埋込医療機器には、直径30マイクロメートルのマグネシウム合金ワイヤが必要不可欠だったが、従来技術では50マイクロメートルが限界だった。

 今回、出発材料に急速凝固粉末冶金法で作製したナノ結晶材料を用い、伸線加工技術の高度化を図ることで直径30マイクロメートルのマグネシウム合金製極細ワイヤを実現させた。従来比で、ワイヤの直径は5分の3、その断面積は約3分の1になった。

 従来の極細マグネシウム合金ワイヤの機械的強度(降伏強さ)は600メガパスカル程度が限界だった。今回作製に成功した超極細ワイヤは788メガパスカルの降伏強さを示し、機械的強度が約50%も向上した。

 超極細・超高強度マグネシウム合金ワイヤの応用は、(1)生体吸収性ステントなどの循環器用医療機器(2)生体吸収性の縫合糸や血管結合具などの外科・インプラント用医療機器(3)電気配線材料の軽量化(ワイヤハーネスなど)(4)燃料電池の電極材料など、さまざまな分野が期待される。

 特に今回製造に用いたマグネシウム合金は生体内留置では不適合とされているアルミニウムを含まないため、生体吸収材など医療機器への展開が大きく期待できる。

 今後は熊本大学、東邦金属、福田金属箔粉工業との共同研究を加速させ、さらなる極細化・量産化の技術開発を行う。同時にKUMADAI不燃マグネシウム合金などの他のマグネシウム合金への展開を図り、並行して生体吸収性医療機器などの応用製品の開発を進めていく。

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