「自由契約から首位打者」史上初の快挙に挑むヤクルト坂口智隆

ヤクルト・坂口智隆【写真:荒川祐史】

近鉄最後の生き残り、オリックス・ヤクルトで活躍の俊足外野手

 ヤクルトの坂口智隆は、22日の阪神戦でも3打数1安打(1四球)と活躍し、打率.356とセ・リーグの打率1位をキープしている。

 今や、近鉄バファローズに在籍した最後の現役野手となった坂口。投手では、ヤクルトの同僚、近藤一樹とMLBマリナーズの岩隈久志が現役を続けているが、野手は坂口しか残っていない。神戸国際大附高から2002年、ドラフト1巡目で近鉄に入団。1年目から一軍戦に出場し、2005年に近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブが合併して以後は、オリックスの主力選手として活躍してきた。

 2009、2010年には3割をマーク。俊足で守備範囲の広い外野手として2008年~11年まで4年連続でゴールデングラブ賞を獲得するなど、イチローの再来を思わせるスピード感のある選手だった。しかし2012年以降は故障が相次ぎ、出場試合数が減少。2015年は36試合の出場にとどまり、オフに大幅減俸を提示された。これを拒否した坂口は、自由契約を選択し31歳でオリックスを退団。同年11月、ヤクルトと契約した。

 2015年のセ・リーグを制したヤクルトの右翼は雄平で固定されていたが、バレンティンが故障で戦線離脱したこともあり、中堅、左翼は比屋根渉、上田剛史、三輪正義、デニングらの併用。坂口がポジション争いに加わる余地が十分にあると思われた。

 翌2016年、坂口はオープン戦で19試合53打数22安打、打率.415と大暴れ。規定打席未達だが、チーム最多安打を記録した。

 この成績もあって、2016年は開幕から「7番・左翼」でスタメン出場。最終的には打率.295(10位)。チーム最多の155安打を放った。ヤクルトは前年の優勝から5位に沈んだが、その中で坂口の活躍は目立ったものだった。

 2017年も.290(12位)、チーム最多の155安打を記録。1、2番、時には3、5番を打ち、2016年は0本だった本塁打も4本打つなど、中軸としても活躍した。球団史上最多のシーズン96敗を記録して最下位に沈んだヤクルトにあって、坂口の活躍は数少ない明るい話題になった。

ポジション争いで内野に転向、打撃抜群のユーティリティープレーヤーに

 しかし2018年、状況は変わった。キャンプ直前にMLBから青木宣親が加入。外野は青木、バレンティンが確定。雄平や若手の山崎晃大朗もいるため、坂口のポジションは保証されないことになった。キャンプではグラブをミットに持ち替えて、一塁を守る坂口の姿が見られた。

 オープン戦で坂口は16試合40打数17安打、打率.425。またチーム最多安打を記録する活躍を見せた。ポジションは外野13試合、一塁5試合とテスト段階ではあったが、打撃面では坂口は打線から外せない存在となっていた。開幕戦、坂口は「6番・一塁」で先発し、5打数4安打2打点と大活躍。以後も打撃好調を維持し、正一塁手の座を手にした。

 坂口は2017年まで15シーズンのキャリアで、外野以外のポジションは一度も守ったことがない。しかしここまで1失策と無難にこなしている。また、試合経過によっては左翼も併せて守っている。チームにとっては苦肉の策としての一塁起用ではあったが、打撃が抜群で、しかも使い勝手の良いユーティリティプレイヤーを得たことになった。

 坂口が首位打者を取れば、34歳3か月での初タイトルとなる。これは日本人の初首位打者としては、1987年の新井宏昌(近鉄 35歳6か月)、2007年の稲葉篤紀(日本ハム 35歳2か月)、1993年の辻発彦(西武 35歳0か月)についで、4番目の高齢記録になる。

 それ以上に、自由契約になった選手がその後首位打者になれば、NPB史上初めてのことだ。逆境になればなるほど力を発揮する坂口の今シーズンに期待したい。

(Full-Count編集部)

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