「坂道のアポロン」小玉さん 波佐見舞台に新作 窯元の日常リアルに

 1960年代の佐世保市を舞台にした人気コミック「坂道のアポロン」などで知られる市出身の漫画家、小玉ユキさんの新作「青の花 器の森」が「月刊フラワーズ」(小学館)で連載中だ。今回の舞台は東彼波佐見町の陶郷・中尾山。波佐見焼の窯元が集まる中尾郷の町並みや職人の日常がリアルに描かれている。

 主人公は、波佐見焼の窯元で絵付け師として働く女性、青子(あおこ)。ある日、勤務先にフィンランドで作陶活動をしていた青年、龍生(たつき)が入ってくる。龍生の人を寄せ付けない雰囲気や「絵付された器に興味がない」という物言いにいら立つ青子だったが、彼が作った器を手に取ったとき、ひとりでに絵柄が浮かび上がって見える不思議な感覚を抱く-。フラワーズは毎月28日発売。現在発売中の6月号に第2話を掲載している。

 小玉さんは連載前、中尾郷を複数回取材で訪れた。1月には1週間ほど滞在。窯元の職人たちと交流しながら、窯業の現場を見学した。取材を受けた窯元の社長(59)は「絵付けや成形などそれぞれの得意分野を持つスタッフがみんなで協力し、商品を作り上げていく過程を、専門性も含めてちゃんと伝えてくれている」と作品の感想を語る。

 作品中には同郷入り口にある「陶郷 中尾山」のゲートや大きなつぼがトレードマークの坂道、近くのスーパーマーケットなど実在の風景も多数登場。第1話の冒頭、通勤中の青子が口ずさむ歌「赤い河の谷間」も、午前8時の時報として実際に町内に流れるメロディーで、町民が思わずにやりとする細部が随所にちりばめられている。

 小玉さんの作品「坂道のアポロン」はアニメ化、実写映画化され、舞台の佐世保市も注目された。町の関係者も、漫画やアニメのファンが作品の舞台を観光する“聖地巡礼”など新作のPR効果に期待を寄せる。町商工振興課は「作品と同じ風景を写真で撮影しながら巡るツアーなどいろいろな形が考えられそう」とアイデアを膨らませていた。

 ■小玉さんメッセージ:「器を通した人間模様を」

 地元が産地に近く、元々親しみ深かった波佐見焼ですが、取材で何度か伺ううちに波佐見の町への愛着がどんどん深まってきました。器を通じて生まれる人間模様や人と人とのつながりを描いていけたらと思っています。

「青の花 器の森」の最初のページ。主人公の青子が中尾郷の窯元に通勤する場面から始まる(©小玉ユキ/小学館)
作品中に登場する中尾山の坂道=波佐見町中尾郷

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