エッサール買収、決着時期不透明に インド売却案件、大半が混乱

 インドで過剰債務を抱えた鉄鋼メーカーの再建スポンサーを選定する売買プロセスが、大多数の案件で混乱をきたしている。エッサール・スチールやブーシャン・パワー&スチール(BPSL)は売却先を選定する入札要件で揉めており、決着したかに見える他の案件でも「物言い」が付いている状態だ。新日鉄住金はアルセロール・ミッタル(AM)とエッサールの共同経営を計画しているが、決着時期が見通しにくくなっている。

 インド破産・倒産法の下で再建が図られているエッサールなどは、当初は法的管理下に置かれてから270日以内で売却を実行する規定に沿って進められていた。

 ただ現状ではその日限が有名無実化しつつある。エッサールではAMが入札プロセスの始まる時点で印大手リローラーのウッタム・ガルバ・スチールスの株式29%を保有し、そのウッタムが経営難にあることを再建スポンサーとして不適格だと指弾されている。

 一方、AMの対抗馬であるロシア系ファンドのニューメタル・モーリシャスもエッサール創業家の人物と組んでいることが問題となっている。

 結局、エッサール売却は金額や再建計画といった内容以前の入札要件をめぐり膠着状態に陥り、当初予定から1カ月ずれこんだ5月下旬の決着も絶望的と見られている。今後、インドが夏季休暇に入ることもあり、事態が動きだすのは7~8月になりそうだ。

 経緯は異なるが、入札要件で揉めているのはBPSLも同様だ。当初の応札者だったタタ製鉄やJSWスチールに割って入る形でインド系のグプタ氏が率いる英国のリバティ・ハウスも「参戦」を表明。これを会社法審判所(NCLT)が認めたため紛糾している。

 決着したかに見えるブーシャン・スチール(BSL)やエレクトロ・スチール・スチールスの売却も火種はくすぶっている。BSLは売却先にタタが選ばれ、NCLTも承認。これを受けタタはBSLの株式73%を取得したが、BSLの創業家がこれに不服を申し立てている。

 エレクトロは英国に本社を置くインド系資源会社のベダンタ・リソーシズが債権団から売却先に選ばれたが、競合入札者が審判所に訴えたため手続きが完了していない。

 新日鉄住金はAMが買収を決めた後、共同経営でエッサールを立て直し、成長市場のインドにおける海外事業として育てていくことを狙っている。ただ他の事例を見ても完全決着に至るまでの時期は見通しにくい。入札条件自体は有利と目されているだけに、腰を据えた持久戦となりそうだ。

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