金属行人(5月25日付)

 取材でさまざまな団体の総会に出席する機会がある。予算案や事業計画などの議案が真剣に検討され、決議されていく。ただ、ほとんどが「異議なし」で粛々と進む。質疑応答の際に質問が出ることはまれなことだった▼ところが、先日出席したある総会は今年度の予算案で質問が出た。前年度の決算で製品の売上げに応じて会員から徴収され、当該団体にとっては収入となる項目が半減した。今年度はこれが元に戻るという想定で予算が組まれていた▼仮に元に戻らないと団体の正味財産はほぼゼロになる。ここを会員が懸念したのだった。「我々のような業界団体は財産がゼロでは運営できない。どう考えるのか」という至極まっとうな質問で、急に場が張り詰めた感じになった▼結局、そこは運営側も懸念していて対策を考えていく必要があるということだったが、特に具体策はないようだった。場が紛糾することもなくそのまま予算は承認されたが、次回が非常に気になる総会となった▼この回答内容では新規入会して初めて参加した会員は不安だろう。さらに総会に遅れてきた新規会員の1人は座る場所が分からず、記者席に座っていた。こうした対応を見て、他山の石とするところは多々あると感じる。

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