日ハム栗山監督が受け継ぐ「日本一のバトンタッチ」 道を究めた剣士の言葉とは

日本ハム・栗山英樹監督【写真:荒川祐史】

18日の楽天戦で剣道世界一の栄花直輝さんが始球式

 札幌ドームのマウンドから裸足でボールを投げた人物がいる。18日の日本ハム対楽天戦。剣道で世界一になったこともある栄花直輝さん(50)=北海道警察=が剣道の防具を着け、ノーバウンド投球を披露した。

 4月の全日本都道府県対抗剣道優勝大会で北海道を21年ぶりの優勝に導いたことによって実現したセレモニーだった。「剣道の普及発展のために、このような機会をいただき、ありがたい」と話す栄花さんは「日本一のバトンタッチをしたいと思います」とマウンドから熱いエールを送った。

 その言葉をベンチで聞いていた栗山英樹監督は「すごいプレッシャー」と嬉しそうに笑った。

 実はこの2人、昨年3月に札幌ドームで語り合っていた。「剣道の全日本選手権とか見ていると、勝つべきして勝っているわけで、何かヒントがないかと見ていたりする」と言う栗山監督は、栄花さんが普段どんな生活を送っているのか質問攻めにした。

 その時の様子を栄花さんはこう振り返る。「(日本ハムが)ちょうど2連覇を目指す時で、プレッシャーを乗り越えるために心掛けていることなどを聞かれました。探究心というか、何でも吸収しようとする姿勢が印象的でした」

野球と剣道、異業種交流で得たもの

 2000年に全日本選手権で優勝し、世界選手権では団体戦4度、個人戦1度の優勝を果たしている栄花さんには、大きな大会前に必ず実行していることがある。稽古で使った道場の雑巾がけだ。「雑巾がけをしたからと言って、何か技術が成長するか、スピードが速くなるかと言えば、わかりません。でも、心が落ち着いて清々しい気持ちで臨むことができます。技術だけではなく、物や人に感謝して臨んでいますというお話をさせてもらいました」

 その言葉は栗山監督の心に響いたようだ。「本当に道を極めるのはああいうことなんだろうなって。そこから学ぶことはすごく大切。栄花さんたちの生活というのは、まず道場に行って、礼に始まり、雑巾がけから始まる。日本人が持っている、大切にしなければいけないことがそこにある。そういうところは、ものすごく野球に近い。選手たちの成長というか、プレーを見ているとそう感じる」と語る。

 野球と剣道。共通点が少なそうに見える競技からも学び、若い選手を育てるための力に変えていく。「日本一のバトンタッチ」というセレモニーの陰には、栗山監督らしい異競技交流のエピソードがあった。

(Full-Count編集部)

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