長崎大 海洋微生物を活用 創薬拠点目指す 研究者チーム新設へ

 長崎大学は長崎近海の海洋微生物を活用した医薬品開発を本格化させ、今夏にも学部横断的な研究者チームを新設する。創薬部門を統括する下川功理事は「強みを生かせば、ほかにはできないことが可能になる。他大学とも連携して創薬の拠点になりたい」と意気込む。
 近年、医薬品開発に占める日本の存在感は低下している。同大によると、1990~2000年代に世界で販売される医薬品別の売上高トップ10に日本の製薬会社のものが複数あったが、2015年にはゼロになった。こういった状況を打破し大学発で新たな薬をつくり出そうと、長崎大は12年に創薬研究を支援する「先端創薬イノベーションセンター」を立ち上げた。
 新薬をつくるには、さまざまな種類の化合物が必要で、製薬会社は100万~300万種にも及ぶ化合物を所有する。ただ、その多くは人工的に合成されたもので、創薬には天然物由来の化合物を使うことが重要となる。
 長崎大の強みは、約2万種の海洋微生物などのサンプルがあること。これまで別の目的で収集していた長崎近海の細菌や菌類を創薬に生かすことができる。約2万種の微生物などからこれまで発見されていない新たな化合物を抽出することが可能という。
 すでに670種の化合物を抽出しており、年度内には千種に増やし、将来的には2万種を目指す。抽出に携わる人員も現在の5人を、年度内に倍増させる。
 長崎大はさまざまな分野の研究者がチームとして取り組むことが特長となる。現在の医歯薬学系研究者11人に、水産学部や環境科学部などから新たに6、7人が加わる予定。
 創薬には研究者と医師が密接に連携することが必要。長崎大学病院の医師がどんな医薬品が必要なのかを研究者に提案する一方、医薬品の候補となる化合物を研究者が見つければ医師が治験で協力することを想定している。同病院は、大学の研究者と連携した上で、高度な研究や治験に取り組む「臨床研究中核病院」の20年度認定を目指す。
 同大で創薬に取り組む田中義正准教授は「医薬品の候補のうち販売できるのは3万分の1。(開発に必要な)費用は1千億円~2千億円、期間は15年程度かかる。それでも長崎にとって大きな夢や希望となりうる分野」としている。

海洋微生物から化合物を取り出す大学院生=長崎大(同大提供)

© 株式会社長崎新聞社