新幹線トンネル工事で水枯れ 諫早・多良見の井樋ノ尾地区 農家「死活問題」 機構は井戸掘削

 九州新幹線長崎ルートの久山トンネル工事現場に近い長崎県諫早市多良見町井樋ノ尾(いびのお)地区で、田畑の水源となっている河川の水が枯渇していることが25日、分かった。住民は田植えできなくなっており「必要な農業用水がなく死活問題」と訴える。工事発注元の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は長崎新聞の取材に「水量減少はトンネル工事の影響と考えられる」と認め、住民らと対策を協議している。
 久山トンネルは、諫早市貝津町-長崎市船石町を結ぶ総延長5015メートル。2013年12月に着工して東西両側から掘削を進め、東工区は19年3月、西工区は18年12月に完成する予定。
 水枯れが確認されたのは同地区を流れる井樋ノ尾川上流の水源。久山トンネル掘削現場から北西約1・4キロに位置し、6世帯(水田約3ヘクタール)がコメを栽培している。長年、この水源から農業用水を使っていたが、今年初め、水量の減少に気付き、諫早市に相談した。
 同機構は、工事前から川の流量を計測。市から連絡を受けて調査したところ、昨年12月まで毎分200リットルだった流量がほぼなくなっていた。同地区近くでトンネルを掘削し始めた時期と重なるため、住民に4月、「水量減少は工事の影響と考えられる」と説明、対策工事に入った。
 4月中旬から地下水をくみ上げるための井戸(深さ100メートル)を同地区内に掘削、5月上旬に完成したが、地下水は出なかった。今月23日にも住民説明会を開き、別の場所に井戸を掘る方針を示した。
 近くで農業を営む男性(64)は「山の東側の久山町方面に大量の水が流れていると聞いた。山の地下水脈が断たれたのだろう」と指摘。「来週から田植えを始めたいが、多くの水がいるのにどうしたらいいものか。梅雨明け以降にはもっと大量の水が必要。常時、水を確保する対策を打ってほしい」と訴える。
 同機構広報部は「トンネルと水源の距離があり、事前調査で想定していなかった。トンネル工事で流量が減ることはある。因果関係を調査し、住民が必要な水量の確保を急ぐ」と答えた。同機構は住民に水稲栽培を要請しており、収量が減少した場合は金銭補償を検討するという。
 22年度開業予定の長崎ルート(武雄温泉-長崎、線路延長66キロ)のうち、61%(約41キロ)がトンネル。同機構によると、同地区に隣接する長崎市古賀地区でも同様の水量減少が確認され、井戸を設置する予定。

新幹線トンネル掘削工事の影響で農業用水の確保が困難な状態に陥っている水田=諫早市多良見町

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