「即戦力」は業界内の経験値だけにあらず スポーツビジネスに必要な人材とは

5月25日に開催された「パ・リーグ キャリアフォーラム」の様子【写真提供:(C)PLM】

スポーツ業界合同の中途採用イベント、「パ・リーグ キャリアフォーラム」開催

「スポーツビジネスの世界で自分が何をしたいのか、よりはっきりとした」

 5月25日にベルサール飯田橋ファーストで催されたスポーツ業界合同の中途採用イベントで、このような声が参加者から多く聞かれた。仕事としてスポーツに携わることへ関心を持ち、転職も視野に入れる人の道標となれたことは、業界初の試みとなった「パ・リーグ キャリアフォーラム」にとって最も意義深いことではないだろうか。

 当イベントには、プロ野球のパ・リーグ6球団やJリーグ、BリーグやTリーグなどの国内プロスポーツリーグを中心とする合計15企業が出展した。パシフィックリーグマーケティング株式会社(以下PLM)と、2018年度のパ・リーグオフィシャルスポンサーである総合人材サービスのパーソル グループから、パーソル キャリア株式会社の運営する転職サービス「DODA(デューダ)」による共同開催で、「パ・リーグ6球団とPLMの中途採用マーケットにおける認知形成」と「スポーツ業界全体での実施による人材調達業務の効率化」が狙いだ。出展社はそれぞれ企業ブースエリアを設け、訪問した参加者に説明会と個人面談を行った。

 今回のターゲットは転職顕在層やスポーツ業界で働くことに興味のある潜在層であるため、企業が求める人材は「即戦力」。とはいえ、「スポーツビジネス」の言葉と分野が世に広く浸透した現在でも、特にプロスポーツの世界では全体の枠に限りがあり、採用も定期的に行っている会社は少なく、チャンスが見つかるまでは待たなければならない。今回のようなイベントが増えれば、そうした課題も解消へと向かいそうだが、現状を鑑みると、プロスポーツの現場で活躍してきた人材は数限られている。だが、「即戦力」の度合いは、スポーツ業界における経験や実績だけで測り切れるものではない。「パ・リーグ キャリアフォーラム」に参加すると、その事実を実感することができた。

 会場内のメインステージ上では、各企業のプレゼンテーションの間にトークイベントが組み込まれた。2度行われた「ホンネトーク」においては、プロスポーツチームとPLMのスタッフたちが自身の転職経験を披露している。「入ってみて驚いたこと」や「こんなはずじゃなかった…」、「選手との関係」など、ここだけの話にステージは盛り上がった。何より、ここで参加者にとって重要であるのは、登壇者にスポーツ業界外からの転職経験者が多かったことだろう。前職の一般企業で得た知識と技術を、現職に移ってからいかにアウトプットしてきたか。その経験談は、転職希望者の今後にも必ずいきてくる。

会場をあとにする参加者からは「決心がついた」との声も

 登壇者の話を総括すると、スポーツ業界に属していなくとも、スポーツ業界に飛び込んでから求められるスキルは磨いておくことができる。特殊な世界ゆえに、他では経験できない業務も確かに存在するが、社会人に必要とされるベースの部分は変わらないからだ。また、希望する企業で働くことになったとしても、マルチタスクが要求される現場も少なくはない。そうした転職経験者の話に耳を傾けると、「即戦力」とは必ずしもスポーツ業界内における経験や実績だけを指すものではないと言える。どのような経験が、どこで役立つかは分からない。

 また、「CROSS LEAGUE TALK」ではパ・リーグから北海道日本ハム、Jリーグの川崎フロンターレ、Bリーグは栃木ブレックスの代表者がそれぞれ壇上に上がった。いずれも、ここ数年で日本のプロリーグを制したチームではあるが、グラウンド上での結果と同時に、ユニークな施策でファンを増やしながら経営面でも成功を収めている。「特別対談」では野球解説者の里崎智也氏を迎え、「DODA」編集長の大浦征也氏とビジネストークセッションを行った。現在、多方面で活躍する里崎氏の綿密な考え方や気の持ちようなどは、長いキャッチャー人生で培われたものだが、社会人にも取り入れられそうなものは多い。畑は違うが、それぞれ独自性とチャレンジ精神の大切さを説いた。

 そして、出展社側の代表者が壇上で異口同音に強調したのが「目的を明確にすること」の重要性だ。企業と世の中のニーズの間にあるフィールドに立ち、何をするべきか。その結果として、周囲にどのような影響が及ぶか。そうしたビジョンを明確に描いて、行動に移せる人材が「即戦力」として見込まれるのではないだろうか。だからこそ、冒頭のような目標を設定しておくことが大前提となる。

 スポーツビジネスの世界に飛び込みたい――。そんな思いに後押しをする「パ・リーグ キャリアフォーラム」。会場をあとにする参加者からは「決心がついた」との声も聞かれた。参加者の真剣な眼差しは、日本においてもスポーツビジネスが“ドリーム・ジョブ”であることを物語っている。

(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2