落語の定席「神戸新開地・喜楽館」 7月11日オープン

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京都・伏見稲荷大社の千本鳥居を現代風にイメージしたエントランスの通路=神戸市兵庫区新開地2(撮影・中西大二)

 神戸・新開地に誕生する上方落語の定席「神戸新開地・喜楽館」が、7月11日の開場まで2カ月を切った。建物はほぼ完成し、6月2日には、こけら落とし公演のチケット発売を控える。新開地では約40年ぶりの演芸場となり、かつて「東の浅草」と並び称されたにぎわいの復活へ、鉄道会社や商店主らも知恵を絞る。(松本寿美子)

 新開地商店街のアーケード街を歩くと、涼しげな白のフラット・アーチが並ぶ通路が目に飛び込んでくる。ひときわモダンな雰囲気にいざなわれ奥に進むと、コンクリート打ちっ放しの2階建てが出迎えてくれる。

 同館は212席。上方落語界では大阪市北区の「天満天神繁昌亭(はんじょうてい)」に続く第2の定席となる。建設費は約2億円で、国が1億円を補助し、兵庫県と神戸市が5千万円ずつを助成。NPO法人「新開地まちづくりNPO」が運営し、昼は上方落語協会が派遣する落語家たちの寄席、夜は貸し館として多彩な芸能を発信する。

 設計した同市須磨区の建築家森崎輝行さん(69)は「シンプルに建て、屋内の芸が際立つようにとの思いを込めた」と語る。フラット・アーチは商売繁盛の神様で有名な京都・伏見稲荷大社の千本鳥居を現代風にイメージ。「毎日大入りになり、ここから若い落語家が育ってほしい」と願う。

 街も開場に備える。神戸高速鉄道(神戸市中央区)は5月中旬から、同館最寄りの新開地駅3番出入り口の階段や東改札口周辺を、落語の世界観に合うよう美装し始めた。

 階段は、同館のエントランスを飾るゲートや赤じゅうたんのデザインにラッピングする。駅構内の壁に、法被や各一門の紋などのイラストを描く案も。案内表示も随所に設置し、寄席へ向かう気分を盛り上げる。

 事業費は市の半額補助を含め約970万円で、7月初めには作業を終える。同鉄道の赤田和則取締役・事業部長(50)は「寄席を通じて新開地の魅力を知ってもらい、街の認知度が上がってほしい」と期待する。

 商店主らも高揚する。新たな定席の候補地となるよう、最初に上方落語協会に手紙を書いた「源八寿し」の若大将、新(しん)将一郎さん(40)は「構想から3年半。実現してよかった」としみじみ。老舗焼き鳥店「八栄亭上店」は寄席の客を想定し、4月から木曜だけランチ営業を始めた。店主の伊藤直子さん(45)は「開場前のウオーミングアップ。開場後の昼の営業日はやりながら考えるけど、頑張ります!」と声を弾ませる。

 新開地二丁目商店街振興組合の細川能嗣(よしつぐ)理事長(69)は「喜楽館のお客さん向けに割引や特典を設け、客足を各店舗につなげたい」と話す。

 また同館を運営する同NPOは、内装や備品などの経費を工面するため寄付を募集中。現在、目標額3千万円に対し約1600万円にとどまっている。1口10万円、5万円、1万円があり、寄付額に応じた芳名プレートを同館に飾る。同NPOTEL078・576・1218

■東向き玄関に太鼓判 風水通、露の都さん

 街のにぎわいの起爆剤として期待される「神戸新開地・喜楽館」だが、早くも縁起がいい声がある。

 日本初の女性落語家で、同館のこけら落としにも出演する上方落語協会理事の露の都さん(62)は業界きっての風水通。「一番大事なんは玄関の方角やけど、東向きの喜楽館はものすごくいい」と太鼓判を押す。

 風水では東や東南に玄関があれば客が入るとされ「東に赤色があれば、なおいい」とか。運営するNPO法人「新開地まちづくりNPO」も助言を生かし、インテリアに赤を取り入れて験を担ぐ。

 実は都さん、2006年に開場した大阪の定席「天満天神繁昌亭」建設の際も方角を見立てた。

 同亭の玄関は西向きだが、当初の計画は北向きだった。建築の条件上、玄関を造れる方角は北か西で、都さんは「北は人が入らないので商売に不向き。西はお金がよう出るけど、よう入りもする」と主張。「西には黄色」がいいとして、黄色の日よけも設置された。

 同亭の好調ぶりを思えば説得力は十分。ならばより好ましい東玄関の喜楽館は、大阪を超す繁盛となるか-。