諫干和解協議打ち切り 福岡高裁 開門派の勧告拒否で 7月30日判決

 国営諫早湾干拓事業を巡り、2010年の開門確定判決を履行せず制裁金を科された国が開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟控訴審で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は28日、和解協議の打ち切りを決めた。「開門せず国の基金案で解決を図る」とした2回の和解勧告を開門派が拒み、協議を欠席し続けたため、「現状で次回の期日設定は困難」と判断した。同高裁は7月30日に判決を言い渡す。
 同高裁はこれまでに、国が敗訴した一審佐賀地裁判決を取り消し、開門確定判決の強制力を排除する判決を示唆。判決の内容次第では、確定判決に従わないペナルティーとして国に科された開門派漁業者への制裁金支払いが停止され、支払い済みの制裁金(現在、11億4840万円)の返還を求められる可能性がある。
 和解協議は2月末、3回の期日を指定して始まり、同高裁は3月、非開門での和解を勧告。今月22日には第2次和解勧告を出し、和解受諾を検討するよう改めて求めたが、開門派はこれも拒み続けている。
 農林水産省農地資源課の横井績課長は、有明海沿岸4県と各県漁業団体が賛同している有明海再生のための国の漁業振興基金案について「和解に伴う特別措置。(決裂で)基金の前提が消えた」と説明。「非開門での和解協議継続を求める」との統一見解を出した福岡、佐賀、熊本の3県漁業団体が、基金案とともに要望した排水ポンプ増設も「現時点で困難」との認識を示し、「和解に至れなかったのは非常に残念。判決までの間、和解の可能性があれば真摯(しんし)に努力したい」と述べた。
 一方、開門派弁護団の馬奈木昭雄団長は「国は今後も新たな案で切り崩すだろうが、徹底的に抗議する。判決が出ても100%上告する」と批判した。

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