<隠れた名盤> 松阪ゆうき『俺の空』 望郷の思いつのる表題曲、豊かなビブラートが特長

松阪ゆうき『俺の空』

 音大声楽科卒、ものまねタレントを経て、2015年に演歌デビューした男性歌手の4thシングル。異色の経歴に、若作りに徹した(微笑)風貌、さらに楽曲は本宮ひろ志の人気漫画と同名?、と謎が謎を呼ぶが、聴いてみると実に清々しい。CDチャートでも週間TOP50目前まで来た。

 表題曲は、イントロのトランペットの音色から雄大さを感じる望郷歌謡。三山ひろし風の中高音をベースに加え、コブシではなく豊かなビブラートが特長。「あゝ」の歌詞を「あぁあぁあぁ~」と、これだけ正確にデフォルメする歌謡歌手は、尾崎紀世彦以来かも。

 カップリングの『千年駅』は、津軽に戻って愛しい人に逢いに来るというラブ・バラードでより緩急のある歌唱。Bタイプのカップリング『母なる大地の子守唄』の方は、母の立場からの応援歌で、こちらも穏やかに聴かせる。感情豊かな歌唱も体得すれば、更なるヒット作が出そうな安定感がある。

 今後は、同じ浜圭介作曲のアップテンポの歌謡曲も聴いてみたい。彼の歌声を聴けば、そこに行かずとも広がる大地が思い浮かぶはず。

(徳間ジャパン・Aタイプ1204円+税)=臼井孝

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