<再ブレーク盤> 薬師丸ひろ子『エトワール』 スケールの大きい歌が圧巻

薬師丸ひろ子『エトワール』

 実に20年ぶりとなるオリジナル。全曲のインストが収録されたボーナス・ディスクは、まるで穏やかな映画音楽のようだが、歌声の入った本編は更に上質感がある。

 本編の全11曲は、大雑把に言えば“優しいバラード”で統一されている。しかし、高橋啓太(オトナモード)詞曲の『野の花』からは、ささやかな幸せを教えられるし、さかいゆう詞曲の『私の勝手に好きな人』では、夢追う人を支える女性の一途さに心が和らぐ。また、薬師丸自身が詞を手がけた『アナタノコトバ』は、何度か出てくる「良く生きよう」という言葉と、凛とした歌声に、母の強さを感じさせる。

 中でも、「道なき荒野」の中で確かな足取りを促すように歌うタイトル曲や、「あなたが/この星を回すから」と清らかに歌う『明日が来る』などスケールの大きな歌は、まるで彼女が地球の外側から見つめる女神のようで圧巻。これは、35年以上一途に歩んできた人でしか到達できない境地だろう。

本作を聴けば、様々な形での“優しさ”が日常に溢れていることを実感するはず。

(ビクター・2CD初回盤4800円+税)=臼井孝

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