【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(28)】〈サンユウ〉3拠点で最適生産体制構築 「SteeLinc」へ参画、新製品提案

 サンユウは関西トップの磨棒鋼・冷間圧造用(CH)鋼線メーカー。同社は、1957年に三友シャフト工業として創業し、91年に八尾精鋼を吸収合併して社名を現在のサンユウとした。その後も業容拡大を続け、96年には磨棒鋼・CH鋼線製造業として業界初の株式上場を果たし、現在でも業界唯一の上場企業だ。近畿圏と九州地区を中心に磨棒鋼・CH鋼線を製造・販売しており、子会社には磨棒鋼販売業者の大同磨鋼材工業を持つ。

 サンユウの18年3月期業績は、増収増益となり、磨棒鋼部門の販売数量は5万トン、CH鋼線部門の販売数量は4万7千トンと前期を上回った。生産量が増加した要因は、既存顧客への訪問頻度を上げてニーズを的確に捉え、より良い関係を構築することを主点に営業活動を行い、国内の自動車および産業・建設機械向けが拡大したことなどが挙げられる。また、設備投資に関しては老朽更新が中心となったが、切断面の形状および長さ精度の改善を狙いとした高性能精密切断機導入といった品質向上対策案件、生産性向上案件も実施した。今期は約5億円の設備投資を検討している。

 また、将来にわたって懸念される人手不足に対して、一部でIoT化に向けた投資案件も検討している。具体的には、業務のシステム化や作業の自動化により、生産性向上に向けた取り組みを実施していく考えだ。さらに、売り手市場の昨今、採用活動の対象地域を広げると同時に、近隣地区での採用にも力を入れ、地域への貢献を通じて知名度を上げ、魅力ある会社としてアピールしていく方針だ。

 同社は、人材・設備・資金といった経営資源の弾力的かつ効率的な運用を図るため、17年4月に100%子会社のサンユウ九州を吸収合併した。西野社長は「本社工場・八尾事業所・九州事業所において、各々の設備の特徴を最大限に活用することや、輸送費の最小化などの観点から、最適生産体制を構築・実行しており、効果を上げている。今後も地産地消を大切にする」と話す。

 商品面では、「新日鉄住金の棒線事業ブランド『SteeLinc』の高付加価値鋼材に、当社の2次加工を加えた新しい製品を顧客のニーズに応じて、提案・提供している」(同)と話す。具体的には、焼鈍工程の不要な焼鈍省略鋼や焼き入れ処理の不要な非調質鋼、歪フリー鋼などの新製品を生みだしており、自動車部品メーカーを中心に引き合いは好調。

 今後も「SteeLinc」の鋼材を使用して、磨棒鋼については自動車・ティア1部品ベンダーおよび店売りの販売を強化、CH鋼線については、キルド・合金鋼の拡販戦略を進めるとともに新たな技術開発を行い、参画企業としての貢献度を高めていく方針。

 足元の課題である値上げについては、「素材メーカーからの値上げ実施を受け、自助努力では吸収し切れないとの判断の下、トン当たり1万3千円の値上げを打ち出し、磨棒鋼の顧客にはおおむねご理解いただいた。また、CH鋼線の顧客にも現状の説明を一通り完了し、個別にご相談させていただいている状況。素材メーカー各社もフル稼働となっており、需給は極めてタイトとなっている。製品の安定供給責任を果たすため、コストアップ分の価格転嫁は必要と判断している」という。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

 企業概要

 ▽本社=大阪府枚方市

 ▽資本金=15億1300万円(新日鉄住金の出資比率33・67%)

 ▽社長=西野淳二氏

 ▽売上高=172億2千万円(18年3月期連結)

 ▽主力事業=磨棒鋼、冷間圧造用鋼線の製造・加工・販売

 ▽従業員=255人(連結、18年4月末)

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