漫画「君たち―」の羽賀さん語る

原作の魅力に近いものに

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インタビューに答える羽賀翔一さん

 昨夏の刊行後、累計発行部数が200万部を突破する大ヒットとなった「漫画 君たちはどう生きるか」(吉野源三郎原作)は、80年前の原作を現代に見事に“復活”させた。漫画を担当し、2年がかりで仕上げた羽賀翔一さん(31)がインタビューに応じ「時間はかかったが、原作の魅力に近いものになった」と語った。同作は、情報会社オリコンが31日付で発表した今年上半期のベストセラーランキング(総合部門)で1位に。ブームは続く。

 友だちを裏切ってしまった主人公の中学生「コペル君」は、死んでしまいたいと思うほどに悔やむ―。漫画の冒頭は、そんな苦悩から始まる。「原作の物語で一番感情が強く動くところ。漫画のメインとして描きたかった」と羽賀さん。

 思い詰めるコペル君に「叔父さん」は、立ち直ろうとする気持ちこそが人間の立派さで、苦しんだ経験はいつか自分の支えになると伝える。「自分が中学生の時に読んでいたら、救われる気持ちになったはず」

 企画を打診された2015年当時は漫画家として「崖っぷち」で「自分がどう生きるか」という状況だった。コペル君と叔父さんの交流を軸に「自分で自分を決定する力」を見つけていく物語を読み、日常の小さな出来事の中から意味を見いだす展開に、自身の作風と通ずる部分があると感じ、引き受けた。

 そのまま漫画にすると絵が強くなり、「説教くさくなるのではないか」と模索を始めた。堅苦しくなく、登場人物が生き生きとした原作の雰囲気を変えないよう、物語を自分なりの解釈で再構築したり、設定に細かい工夫を足したりしていった。

 特に大きく変えたのは叔父さんの設定だ。「僕も叔父さん世代。達観してコペル君世代に言葉を紡げるかというと、葛藤や煩悶があるのがリアルだ」。コペル君を導く存在である叔父さんに、原作よりもさらに親近感を持たせ、コペル君と並走するように、共に成長していく大人として描いた。

 羽賀さんが原作で好きなのは、コペル君がデパートの屋上から道行く人々を見て、人間は分子みたいだと叔父さんに語る場面。幼い頃、渋滞する車の中から周りの車を見て、そこに乗る人にもそれぞれの人生があると思った自身の不思議な感覚と重なった。

 「理屈一辺倒じゃなく、感覚的なものもしっかり描こうとしている」。そこが原作の魅力であり、原作者の姿勢を象徴するところだと羽賀さんは考えている。