6・3から27年

 日本は世界有数の火山国だ。世界の陸地の1%に満たない国土に、そのおよそ7分の1に当たる111の活火山が存在するという。平時には美しい山容で私たちの目を楽しませてくれる▲だが、活火山はいつ噴火するか分からない。現在の定義では、過去1万年以内に噴火したことのある山を活火山という。人間の時間感覚の及ばぬところで、火山は突然その怖さをむき出しにする▲本県でもそれを身をもって知る出来事があった。43人が犠牲になった雲仙・普賢岳の大火砕流からきょうで27年。山頂の溶岩ドームが崩落して発生した奔流が、地元の消防団員や報道関係者らをのみ込んだ▲火砕流とは、高温の火山噴出物が高速で山麓を流れ下る現象をいう。専門家しか使わなかったこの単語が広く知られ、多くの人がその危険性をイメージできるようになったのは、6・3の惨事と引き換えだったことを忘れてはなるまい▲2014年には御嶽山が噴火、登山客63人が犠牲になった。今年は草津白根山の噴火で1人が死亡。いずれも小規模な山頂噴火だったが、貴い人命が失われた▲火を噴いて鳴動する山を目の当たりにするたび、思い知らされるのは人間の存在の小ささだ。私たちの生命や財産を守るため普段からどう備えるべきか。火山国の住人にとって永遠の課題である。(泉)

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