松坂大輔と球宴と藤崎台 復興を願うマウンドで、復活した男の勇姿を―

中日・松坂大輔【写真:荒川祐史】

「ファン投票」で2位につける松坂、第2戦の舞台となる藤崎台との縁とは

 プロ野球界は2018年の交流戦がスタートした。異なるリーグ、普段とは少し異なる雰囲気での戦いで、ファンも楽しんでいることだろう。セパの戦いといえば、「祭り」も近づいてきている。「マイナビ オールスターゲーム2018」。今季は7月13日に京セラドーム大阪で第1戦が、そして7月14日には2016年の熊本地震で被害を受けた藤崎台県営野球場で行われる予定となっている。

 毎年、注目を集める「ファン投票」は、5月22日から既に始まっており、6月17日まで行われる。投票は各公式戦開催球場や全国のチケットぴあ、有名書店にある投票用紙だけでなく、郵便による投票、そしてインターネットでのWebファン投票でも受け付けており、5月29日からは連日ファン投票結果の中間発表も行われている。

 数々の注目点はあれど、大きな注目を集める1つがセ・リーグの先発投手部門だろう。中間発表でトップに立つのは巨人のエース菅野智之投手であり、これは誰もが納得するところ。そして、2位につけ、この菅野を僅差で猛追しているのが、中日の松坂大輔投手である。

 3年間在籍したソフトバンクを退団し、中日を新天地とした松坂。悩まされてきた右肩の故障から復活を遂げ、中日で先発ローテの一角を担っている。NPBでは4241日ぶりとなる白星をあげただけでなく、ここまで6試合に投げて2勝3敗、防御率2.51の成績。昨季まで全くと言っていいいほど投げられなかった姿がウソのよう。中間発表がスタートした5月29日の段階で菅野と松坂の差は5440票差だったが、6月1日の段階では2633票差に縮まっている。

 1999年に横浜高校から西武に入団した松坂。2007年にレッドソックスに移籍するまでの全8シーズンでオールスターに選出されている。故障による2度の出場辞退こそあったが、その8度のうち6度がファン投票での選出だった。2004年には第1戦でMVPを獲得。2005年には当時巨人に在籍していた清原和博との全球ストレート勝負でファンを沸かせ、オールスターに欠かせぬ存在だった。

熊本の球児にとっては「象徴的存在」、松坂が抱く特別な思い

 今年のオールスター第2戦は、熊本地震の復興支援として震災で被害を受けた藤崎台県営野球場で行われる。試合当日には熊本県内の少年野球チームに所属する球児も招待され、今までにない盛り上がりを見せることになるだろう。

 この熊本の球児たちにとって“聖地”である藤崎台県営野球場は、熊本地震の際には多大なる被害を受けた。バックスクリーンの亀裂、外野席の隆起、内野席への亀裂、照明設備の損壊などが生じ、その年に開催予定だった巨人対中日戦が中止になった。この年の7月、藤崎台県営野球場の復旧を支援するために、熊本県に対して義援金1000万円を贈ったのが、当時ソフトバンクに在籍していた松坂だった。

 当時、2015年8月に受けた右肩の手術からの復帰を目指し、ファームでリハビリの日々を送っていた松坂。この義援金だけでなく、ファーム施設で行われた被災地支援の募金の呼びかけなどにも参加しており、共に義援金を贈った摂津正投手とともに、球団を通じてこうコメントを出していた。

「今回の震災にあたって、未来の野球を担う子どもたちに対して、何らかの形で支援をしたいと考えていた所、藤崎台県営野球場の被害状況を知り、修復費用の一部になれば、と義援金を送らせていただきます。熊本県内には、被災しながらも野球を続けている球児も少なくないと聞いています。もうすぐ甲子園も始まりますが、熊本の高校野球にとって象徴的な存在でもある藤崎台球場が、一日も早く修復を終えることができるように願っています」

 右肩故障から復活し、マウンドで投げる姿に感動を覚えたファンも多いはず。確かに、松坂より結果を残している素晴らしい投手は数多くいる。だが、松坂には成績だけでは、一言では言い表せない、ファンを惹きつける魅力がある。今年のオールスターで松坂大輔を見たいと思っているファンは少なくないはずだ。

 藤崎台県営野球場は2017年4月に復旧し、4月18日に巨人がヤクルト戦を、そして5月13日には松坂のいたソフトバンクが楽天戦を開催した。だが、松坂は右肩の故障で楽天戦にはいられなかった。その藤崎台で、今度はオールスターが開催される。ファン投票、選手間投票、監督推薦、そしてプラスワン投票……。選出方法は何だっていい。復興を願う試合のマウンドに、復活を果たした松坂大輔がいる――。そんなドラマがあってもいい。

(Full-Count編集部)

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