豪州スーパーカーも次世代規定でHV受け入れを検討。「電動化の波は確実に押し寄せている」

 オーストラリアを代表するツーリングカー・カテゴリーであるVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのCEOを務めるショーン・シーマーは、2018年の終わり頃から議論を開始する予定の次世代マシン規定“Gen3”に向け、ハイブリッドのパワートレイン導入も視野に入れていることを明かした。  

 現在、VASCで採用されている“Gen2”との名称を採用したルールセットでは、FIAインステイテュートの開発した鋼管ロールケージの共通シャシーを軸とした『カー・オブ・ザ・フューチャー(COTF)』と呼ばれる車両規定が採択され、2021年まで現行規定で争うことが決まっている。

 そのGen2規定のもうひとつの特色としては、長年シリーズタイトルにも掲げられてきたV8エンジンのみでなく、V6や直列4気筒を認めたほか、OHVの自然吸気だけでなく直噴ターボの導入も許されている点にある。

 さらにボディ形状の面でも、これまでの4ドアサルーン以外に2ドアクーペ、5ドアハッチバックなども参戦可能となり、2018年に入ってホールデンは5ドアHBの新型モデル『コモドアZB』を投入。

 そして直近にアナウンスされた話題として、フォードが2019年シーズンから正式に『マスタング』の投入を表明。いよいよ本格的な“2ドア時代”が幕を明けることとなったが、これを受けGM傘下のホールデンは、シボレー・ブランドから『カマロ』をチョイスし、グリッドのホールデン陣営の約半数をこの2ドア・ポニーカーに置き換え、長年のライバルに対抗するのではないか……と目されている。

 こうした背景のなか、CEOのシーマーはネクスト・ジェネレーション(Gen3)の元で採用すべき規定のフレームワークについて「非常に予備的な議論の段階」にあることを強調した上で、ハイブリッドシステムの導入が推奨されたり、または強制的に搭載が義務付けられたりする可能性もある、と語った。

「我々は2021年以降の新規定に向け議論をスタートさせたいと思っている。この先の3シーズン、Gen2規定がロックされていることは幸いで、その間に充分な話し合いを持ち、2年間の猶予期間に技術開発を確実に進行させたいと考えているんだ」とシーマー。

「委員会に参加しているマニュファクチャラー、チームとともに次世代マシンの外観や技術的ハイライトを定義するプロセスを予定している」

「彼らが何を望み、何を実現したいのか、そのフィードバックやインプットを行い、彼らの市販モデルの方向性とも合致した規定を作り上げたい。“ハイブリダイゼーション”は明らかに重要なテーマで、我々はその議論も進めていくことになるだろう」

 数多くのマニュファクチャラーとシリーズを関連づける橋渡し役となるのもシーマーの重要な任務のひとつで、先に発表されたニッサン・モータースポーツの2018年限りでの撤退を受け、新たに2社以上のマニュファクチャラー新規参戦を実現すべく、現時点でも複数のメーカーと話し合いを続けているという。

「大事なポイントは、我々シリーズの側にそれを実行する能力はあるか、という点だ。ハイブリッド化の流れはマニュファクチャラーの衆目するところなのは疑いようのない事実であり、シリーズにおいて自動車メーカーがさらなる役割を果たすことを期待する上では、外せない検討課題なのは明白だ」

 加えてシーマーは、ハイブリッド規定採用時には“エレクトリック・ブースト機能”も搭載し、ファンにとって「求められているスペクタクルは何か」を追求する姿勢に変わりはないとしながら、そうした技術詳細を推測するには、まだ時期早々だとも釘を刺した。

「それは何も、我々独自のユニークな検討課題、ということでなくグローバルなものだからね。F1に始まり、WEC(世界耐久選手権)、そしてフォーミュラEなど、電動化の波は確実に押し寄せている。我々もネクスト・ジェネレーションの策定に向けては、確実にその方向性を歩むことになるだろう」

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