1993年には16Kの伊藤氏から篠塚氏がサヨナラ本塁打、富山で25年ぶりに“再戦
去る6月2日、県営富山野球場で行われた独立リーグBCリーグ富山-信濃戦の試合前に、富山の伊藤智仁監督(47)と元巨人・篠塚和典氏(60)による「一打席対決」が行われた。
これは25年前の1993年6月9日、同じ北陸地方の金沢市で開催された巨人-ヤクルト戦で、当時ヤクルトの新人投手だった伊藤監督が、9回2死までにセ・リーグタイ記録の16個の三振を奪う快投を見せながら、途中出場の篠塚氏にサヨナラホームランを打たれ0-1で敗れた伝説の試合の再戦企画となる。
富山の先発メンバーと、このイベントに合わせ企画された東京発の観戦ツアー参加者数名を加えた野手陣をバックにマウンドに上がった伊藤監督は、まず92キロのストレートをストライクゾーンへ。左打席の篠塚氏はこれを見送りストライク。2球目は伊藤監督の代名詞、スライダー(91キロ)。これは外角にはずれカウント1-1となった。
3球目はインコースに入ってきた84キロの「やや引っ掛かったような、少しスライダー回転したストレート」(篠塚氏)に篠塚氏が反応。快音とともに25年前のような角度のついた打球がライトへ。しかし、これは切れてファウルとなる。
カウント1-2となり4球目、伊藤監督は92キロのスライダーを低めに制球。篠塚氏のバットが空を切ったかに見えたが、キャッチャーのミットからボールがこぼれると、球審にチップしたとアピール。マウンドの伊藤監督も負けずに空振りだと訴え、そのやりとりにスタンドが沸く。判定はファウルに。
5球目、伊藤監督は98キロのストレートをストライクゾーン外寄りに投げ込む。これを篠塚氏が現役時代を彷彿とさせるフォームで流し打つ。打球はショートの頭を越えレフト前に落ちた。25年前のリベンジを狙った伊藤監督は悔しそうにマウンドにしゃがみ込んだが、すぐに立ち上がり一塁ベースに達した篠塚氏に一礼。対決は幕を閉じた。
篠塚氏「(スライダーは)あの歳になっても…」、伊藤氏「さすが」
「2月の(ホークスとの)OB戦ですかね。あれ以来、野球はやっていませんでした。でも野球人ですから、バットを持つとその気になります」と対戦後の篠塚氏。3球目のライト方向へのファウルについては「気持ちよかったですね。(狙っていた?)狙ってはいないです。インコースに振れる球が来たので。芯には当たってくれたので、もしかしたら打てるのかなって感じはありましたよ」と感触を語った。
伊藤監督のスライダーについては「うん、まあまあ。もちろん現役時代と比べるわけにはいかないけど、あの歳になっても投げられるんだからね。彼もだいぶ練習したと思いますよ」と称えた。
一方の伊藤監督は「25年前とは身体が違うので、ストライク獲るのに必死でした」と切り出し、4球目のファウルチップについては「渾身のスライダーだったんですけれどね。僕には当たっているように聞こえなかったんですけれども(笑)。審判がファウルといえばファウル。しょうがないです」と受け止めつつ、「あれで空振りを獲れなかったところで篠塚さんの勝ちでしたね。あれ以上(のボールは)はないんですけど…」と悔いた。
続けて、「あの歳になっても、スイングはきれいですし、コースに逆らわないバッティングはさすがだなと思って見ていました。(3球目の)ややインサイド寄りのストレートもきれいに打たれて、最後はアウトコースを逆らわずにレフトに打たれた。BCリーガーたちも見習うべきところがあるはず」と振り返った。
また、「残念ながら、リベンジすることはできなかったんですけど、またお越しいただいて、何回でも挑戦したいなと思っています」と再々戦への意欲ものぞかせていた。
試合は、伊藤監督率いる富山が、昨年まで巨人でプレーしていた左腕・乾真大の7回1失点(自責0)、13奪三振、与四球1の好投と、外野手のケビン・マクシーの4安打(1本塁打)4打点の活躍などで7-2の快勝。ホームのファンに加えて観戦ツアーで訪れた人々が見守る中、ひたむきなプレーを披露しBCリーグの魅力を伝えてみせた。
※球速は場内表示より
(佐藤直子 / Naoko Sato)