【現場を歩く】〈中山三星建材・堺工場〉安全第一の「旗艦工場」 軽量形鋼、電縫鋼管など省力・省人化で効率生産

 軽量形鋼など軽量建材メーカー大手の中山三星建材(本社・大阪府堺市、社長・辻村光夫氏)の本社と同じ敷地にある堺工場は、全国10カ所にある工場の「旗艦工場」。リップ溝形鋼・軽溝形鋼など軽量形鋼と中小径角形・丸形など電縫鋼管を生産している。全社で月2万トン強の出荷量のうち5千トン前後が同工場の出荷量。安全第一と、省力・省人化による安定生産・安定供給をテーマにする同工場を訪問した。(小林 利雄)

 堺工場は、大阪市内を走る地下鉄・四つ橋線の終点・住之江公園駅から車で約5分の堺臨海工業地区にある。

 敷地は約3万7千平方メートル、工場は12棟合計2万4千平方メートル。同社最大の清水工場(静岡県、敷地約10万平方メートル、工場建屋約2万8千平方メートル)に次ぐ大きさだ。

 前身の三星産業が1949年(昭和24)に設立した工場で、来年4月に創業70周年を迎える。

 設備は軽量形鋼フォーミング・ライン3基と塗装ライン1基、電縫鋼管が造管ライン2基と塗装ライン1基。形鋼加工ライン2基など。製品倉庫も5棟ほどある。現場社員は34人。平均年齢は38・4歳。

 朝8時30分。全員のラジオ体操で1日が始まる。体操が終ると、製造ラインや倉庫管理など持ち場ごとに「安全点呼」。指さし称呼で安全モットーの唱和や、安全目標の再確認などを行って、製造や出荷などが動き出す。終業は午後5時。昼休みを挟んで1日7・75時間の勤務。夜間勤務はない。土日も基本的には休みの完全週休2日制。

 各製造ラインは1ライン3人が基本。親会社・中山製鋼所から運ばれたスリット・コイルのライン装入からロール・フォーミング加工、出側の製品結束・保管まで3人が多能工として従事する。

 スリット・コイルは重さ2~3トン・高さ2メートルほどで、10巻ほどがライン装入を待っている。保管台はコイルが倒れてこないよう傾斜させている。係員が天井走行クレーンを操作しながら製造ライン入り側にコイルを運ぶ。

「止めろ、離れろ、足場の確保」で事故防止

 クレーン・アームにコイルがきちんと載ったか、確認作業は長さ2メートルほどの鉄棒で行う。「安全対策として、すべての箇所で、直接手で扱うことを厳禁している」と太田善巳執行役員製造本部長代行。2メートルの鉄棒は、ロールの点検確認や製品の結束・保管などあらゆる作業で活躍している。

 「『止めろ、離れろ、足場の確保』が当工場の事故防止モットー。作業者はこのモットーを体に刻み込んで、まず安全に、と作業をしています」と案内役の山森和也堺製造課係長。「製造現場は安全こそが命」(同)だ。緑色で色分けされた通路も含めて整理整頓・清掃が行き届いている。

 ラインではリップ溝形鋼(C形鋼)を生産している。スリット・コイルがロールに装入され、12段あるロールを通過して溝形鋼に成形される。「1~3番ロールでリップ成形、4~7番ロールでフランジ成形、8~10番ロールで型締め、最後の11~12番ロールで残留応力を解消する矯正を行います」と山森氏。コイル装入から製品が出てくるまでの時間は2分ほどだ。

「74アクア・ダークグレー」

 隣には塗装ライン。C形鋼を赤やダークグレーなど「カラー製品」に仕上げて出荷する。同社のヒット商品「74アクア塗装・C形・ダークグレー(DG)」はここで塗装されている。「74アクア」は日本ペイントと中山三星の共同で開発した「ナミコート・ミツボシ74アクアコート」という水性塗料を使った鉛フリー・クロムフリーの環境にやさしいさび止め塗料。

 C形鋼は元々、黒皮(熱延鋼板)製品が主流だったが、赤色のさび止め塗装製品に代わり、さらに現在はダークグレー塗装製品が主流になりつつある。しかも同社が先鞭をつけた「鉛フリー・クロムフリー製品」が市場の人気を博している。

施工図設計・加工付きの受注で顧客増/小回り対応型工場への転換課題

角鋼管は最大100ミリ

 製品倉庫の先が鋼管工場。小径管と中径管の造管ミル2基。訪問時は100ミリ角形鋼管を製造中だった。

 スリット・コイルがラインに装入され、コイルの連続装入を行うためルーパーがある。ルーパーを通って、フォーミング・ラインに入る。まず丸管に成形される。丸管溶接は高周波溶接。溶接部の突起はトリマーで切削され、完全な丸鋼管になる。その先のロールで角形に成形されていく。

 同工場での角形鋼管生産サイズは、角形鋼管が60ミリ×30ミリ角から最大100ミリ角まで。丸管は34・0ミリ径から48・6ミリ径を生産している。

 鋼管も隣接する塗装工場に移動して「74アクア・ダークグレー」など鉛フリー・クロムフリー塗装が施される。高周波加熱・塗装・乾燥して製品倉庫に納まる。

 製品の用途は、軽量形鋼もほぼ同じで、建物の母屋(もや)、胴縁(どうぶち)など建築部材向けが主流だが、このほか産業機械などの架台など幅広い分野で使われる。出荷先は関西、北陸、岡山、鳥取など。

大量生産工場は限界

 同社の工場は、苫小牧(北海道)、清水(静岡)、名古屋、辰口(石川)、堺、田布施(山口)、丸亀(香川)、大分、都城2工場(宮崎)の10カ所。「堺、清水が『空母型』で、他は小回り対応の『駆逐艦型』」と辻村光夫社長。

 堺工場の大量生産型事業から、施工図設計・加工付きの受注など小回り重視まで広げ顧客数を増やしてきた。

 2018年3月期業績は売上高210億円、経常利益20億円と2期連続の増収増益。ROSは9・67%と過去最高だった。「ただ、この状況は続かない。少子高齢化などで大量生産型工場は限界を迎えてきている」と辻村社長。

 堺、清水以外の8工場では、地域密着・小回り対応型の工場にしてきたが、堺や清水でそうした体制にシフトしていけるか課題だ。

 「小回り対応をオフラインでなく、インラインで対応できる仕組みを構築していきたい」。そのためにまず、材料・仕掛品・製品の移動なども含めた全プロセスにわたる生産性向上など「部分最適でなく全体最適を考えたプロセスづくり・システムづくりをやっていかなくてはならない。それに元々、付加価値の少ない商品。人手に頼った生産でなく、IoT、AIなどを駆使した工場に変身して、大いに生産性を高めていく必要がある」と辻村社長は先を見据えている。

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