【神戸製鋼所3本柱(素材・機械・電力事業)の業績動向】〈勝川四志彦専務に聞く〉鉄鋼「今期実質増益、上積み目指す」 アルミ・銅は減益見通し「値上げ含め改善図る」

――まずは前3月期業績の総括から。連結経常益711億円と黒字化を果たして急回復しました。

 「需要堅調なマーケットに支えられた中で、鉄鋼事業では加古川製鉄所への上工程集約でコスト削減メリットが出るなど収益力が回復。建機事業では懸案の中国で事業再編を行い、立て直し策が進んだ」

――昨年度は品質問題の不適切行為による影響が約120億円(経常損失80億円、特別損失約40億円)発生しましたが、転注など業績影響は限定的でした。

 「確かに昨年度の転注の動きなどは限定的だったが、そうした動きは時間をかけて出てくる可能性がある。昨年度は需給タイト感から、そうした動きが顕在化しにくかった面もあるだろう。今後、そうした動きが出ないように再発防止に全力で取り組むとともに、お客様との対話を深めて当社製品に対する信頼回復に努めていく」

――続く今18年度は、経常益が半減となる350億円の見通し。セグメント別要因について、まずは鉄鋼事業から。

神戸製鋼所・勝川専務

 「前年度の鉄鋼事業経常益173億円のうち、90億円は在庫評価影響による一過性利益で、それを除いた実力経常益は80億円程度だった。ただ、加古川製鉄所への上工程集約に伴う一時的なコスト負担が発生しており、それを勘案すれば実力損益はもう少し上かもしれない。今年度は経常益130億円を見通しているが、実力損益は120億円とみており、昨年度比で小幅な増益見込みだ。品質問題の減益影響を10億円織り込んでいるが、上工程集約のコスト削減効果が年150億円フルで効く」

 「一方で減益要素としては、販売費など固定費増加に加え、物流コスト増加など変動費上昇も見込まれる。粗鋼生産量も今年度からは高炉2基体制下で700万トン程度となる。上方弾力性は限定的で、ほぼフル生産を想定している。お客様と会話をしながら、当社が得意とする自動車向けハイテン鋼板や特殊鋼の比率を高め、付加価値の高い製品へのシフトを志向していきたい。収益面では130億円の見通しから上積みを目指す」

――鉄鋼のグループ会社の業績は。

 「昨年度はほとんどのグループ会社が黒字で、特に国内では全社黒字だった。神鋼エンジニアリング&メンテナンスやコベルコ鋼管の業績寄与度が大きかった。海外では立ち上げ途上のコベルコ・ミルコン(タイ)など、戦略投資を行った拠点の早期戦力化を目指していく」

――次に、アルミ・銅事業について。

 「昨年度は経常益118億円だったが、これには在庫評価益が60億円程度含まれており、それを差し引いた実力経常益は約60億円だった。今年度は(1)品質問題影響(約20億円の見通し)(2)原油などエネルギーコストのアップ(3)戦略投資の先行による償却費負担増―があって、経常益20億円とみている。これには在庫評価益10億円が含まれており、実力経常益は10億円となる。場合によっては、自助努力を超える部分についてお客様に値上げをお願いすることも含めて、今の見通しの数字から改善を図るべく、取り組んでいきたい」

――影響の大きい建設機械事業は。

 「昨年度の経常益219億円とほぼ横ばいの210億円の見通しだ。ショベルの国内市場は17年度の排ガス規制による需要増の反動影響で、18年度は需要がやや減りそうだが、海外では増える。グローバルでの今年度の販売台数は昨年度をやや上回るとみている。コベルコ建機としての中国事業の再編と体制整備は完了したが、引き続き債権回収に重点を置きながら、無理にシェアを追わず、着実に利益を確保していきたい」

――機械事業のみ、増益見通しです。

 「昨年度の23億円から75億円に増える見通しだ。昨年度は原油価格が低迷し、厳しい受注環境の中、受注した案件の採算性悪化という一過性の要因などがあり利益が落ち込んだ。今年度は、中国で石油化学分野の投資が持ち直してきており、国内の圧縮機需要も堅調であることから増益となる見通しだ」

――電力事業は18年度に20億円の経常赤字見通しです。

 「神戸発電所の3号機、4号機の新規プロジェクトに関して初期費用を見直したことに起因するもので、一過性であり、問題があるわけではない」

 「19年度からは真岡の発電所が稼働し始め、電力事業の収益も黒字に転じる。真岡の1号機、2号機、神戸の3号機、4号機の新設4機が稼働した後の2023年近傍では、電力事業で400億円程度の経常利益を確保できる見通しであることは従来と何も変わらない」

建機、経常益横ばいの210億円見通し/機械は圧縮機堅調で増益へ

――不動産事業では神鋼不動産の持ち株の大半を譲渡し、740億円のキャッシュが手に入ることに。

 「時間をかけて不動産事業がどうやったら成長できるかを考えてきた。東京センチュリーと日本土地建物との戦略的な業務提携の中で、神鋼不動産の発行済み株式の75%を2社に譲渡する予定であり、これによって事業強化を図ることが可能になる」

――大型投資の資金手当てができます。

 「中期計画で1千億円のキャッシュ対策を計画しており、すでに運転資金改善や保有株式売却などで約370億円を捻出する手を打ってきた。そこに今回の不動産事業提携の結果としての740億円も加わった。将来の成長に向けた戦略投資に資金を振り向けることができる」

 「当社の減価償却費は年900億~1千億円だが、当面はそれを上回る1400億~1500億円の支払いが発生する見込みだ。今は鉄鋼の超ハイテンや自動車用アルミパネルなど将来への戦略投資を行っている。それに加え、品質問題対応で自動化投資等に年100億~200億円を投じる。引き続き資金対策はしっかりやっていく」

――新日鉄住金との2社連携について。

 「両社にとって意味のあるコスト削減策などに引き続き取り組んでいきたい。現時点で新しいテーマはないが、引き続き連携を大事にしていきたい」

――18年度から、特に株主総会後は経営体制が変わります。

 「ガバナンス強化の一環として、取締役会の在り方を見直す。一般的にいうマネジメントボードとモニタリングボードの中間的位置付けになる。執行状況のモニタリング機能を強化し、高い見地からの戦略的な議論を深めていく。加えて、社外取締役の比率の見直しなども踏まえて、経営の透明性を高めていく。成長のみでなく、コンプライアンスや品質、技術面などいろいろな切り口で事業戦略の議論が活発になるようにしていきたい。それに伴い、会長職を廃止して取締役会議長を社外取締役から選ぶことなど、幾つかの定款変更を行う予定になっている」
(一柳 朋紀)

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